研究課題/領域番号 |
25450321
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
藤栄 剛 滋賀大学, 環境総合研究センター, 准教授 (40356316)
|
研究分担者 |
仙田 徹志 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00325325)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ミクロデータ / 戦前期 / 人的災害 / 自然災害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、農家家計のミクロデータを用いて、人的災害や自然災害が農家家計に及ぼす影響を実証的に明らかにすることである。本年度は三つの事項に取り組んだ。①平成25年度に引き続き、人的災害として昭和恐慌を取り上げ、人的災害が集計的ショックとして農家家計の生産性に及ぼした影響や、人的災害に対する農家家計の脆弱性の違いを検討した。②京都帝国大学農林経済学教室「農家経済調査簿」について、その調査データを電子化し、パネルデータとして整備した。③農林水産省統計部の協力を得て、農林水産省「経営復興状況定点調査」のパネルデータ化を図った。 ①については、昨年度得られた成果にさらに修正を施し、学術雑誌に投稿した。 ②については、対象期間が1926年から1933年であり、昭和恐慌前後の期間をはさむ調査データであるとともに、調査農家における貨幣の現物所有、預金、負債、保険支出や講金などを把握可能である。そこで、昭和恐慌前後の貨幣の現物所有、預金、保険支出や負債の動態を集計値ベースで整理したところ、昭和恐慌後に貨幣の現物所有、預金や保険支出のいずれについても減少するとともに、家計費の補填による消費平準化を目的とした借入家計の増加が観察された。 ③については、東日本大震災に起因する各家計の農業被害額や農業共済が震災後の回復に果たした役割を検討するための研究基盤の構築を図ることができた。今後、②と③で整備したデータセットの分析を推進し、学術集会での発表や学術雑誌への投稿などを通じて、成果を公表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書に記載した本年度の研究計画に比べ、研究の実施がやや遅れ気味であるため、上記の達成度評価とした。本年度は研究代表者の所属組織の変更など、研究計画立案時に予想し得なかった事態が生じたため、研究の進捗にやや支障が生じる結果となった。こうしたことから、研究成果の公表がやや遅れている。今後、成果公表の迅速化に努めるとともに、必要に応じて研究計画を変更するなど、所定の研究成果が得られるよう、工夫を図る必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、データセットとして整備した「農家経済調査簿」の分析ならびに、「経営復興状況定点調査」の分析を推進する。そして、「農家経済調査簿」の分析によって、昭和恐慌前後の農家資産の動態を明らかにし、恐慌への対処手段としての資産の取り崩しや信用市場へのアクセスの有効性を検討する。また、「経営復興状況定点調査」の分析によって、東日本大震災前後の農業収入、借入金、作付面積、農業依存度などの農業経営に関する諸指標の動態を明らかにするとともに、農業共済が被災からの回復・復元に寄与した役割を評価する。これらの検討を通じて、先行研究で明らかにされてきた定性的な結果や仮説提示にとどまっている未検証の仮説の検証などを行い、これまでの研究成果を発展させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属組織の変更など、研究計画書立案時に想定していなかった事態が生じ、整備済みデータセットの分析や成果発表がやや遅れている。こうしたことから、当初予定していた研究エフォートの維持が困難となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
整備を終えたデータセットの分析や成果の公表を迅速に進める。また、当初予定していた研究計画が平成27年度中に実施困難であることが見込まれる場合には、事情に応じて、研究期間の延長申請を行い、当初予定していた研究計画を実施できるよう、研究計画を柔軟に変更することで対応する。
|