今年度は、共著の論文「酪農経営における固定化負債脱却過程のコンフリクト」(著者:横溝 功・小野地一樹・市居幸喜)が1年遅れで、『社会・経済システム』(第37号、2016年10月、pp.117-124)に上梓されたので、研究協力を頂いた元北海道農業協同組合中央会の小野地一樹氏、(一社)北海道酪農畜産協会の市居幸喜氏、及び調査対象先の北海道のオホーツクにあるJAに抜刷りを謹呈させて頂いた。そして、小野地氏を通じて、調査協力を頂いた酪農経営4戸にも抜刷りを謹呈させて頂いた。そのことを通じて、調査を実施した酪農経営の最近の動向を把握した。 また、近年、畜産部門では、農水省の畜産クラスター事業が軸になって展開されている。すなわち、施設や機械が当該事業で導入されているのである。しかし、これは畜産・酪農経営の収益性を向上させるための出発点であることを、『地上』誌(Vol.72、No.6、2018年6月)の取材で主張を行った。畜特資金で用いられているPDCAサイクルが、畜産クラスター事業においても不可欠であることを指摘した。 さらには、『農村と都市をむすぶ』誌において、大規模肉用牛(和牛)肥育経営のビジネスリスクの実態を明らかにし、高騰した価格の肥育もと牛を導入した肥育経営のキャッシュフローのシミュレーションを行った。今後は、肥育牛価格の下落に備えた資金対応が必要となることを指摘した。また、牛マルキン補填金の重要性についても言及した。 以上のように、本研究で行った研究蓄積が、畜産クラスター事業、及び牛マルキン補填金にも有効に活用されることを明らかにした。研究の継続的な展開として、畜産クラスター事業を軸に、北海道のオホーツクにあるJAの再調査につなげることができるのである。
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