現代の農業はグローバリゼーションと産業化への対応が不可避となっているが、零細経営が集積している東アジア農業においては容易ではなく、農業者は協同組合組織を形成して対応してきている。そこで本研究では、農業産業化が著しい茶産業を対象として、東アジア零細農業における協同組合組織の組織・事業方式の革新による産地農業の持続可能性について検討した。中国、韓国、日本茶産地の協同組合組織を対象として組織・事業方式と農業者意識との関係の統計的分析を行うとともに、零細農業において付加価値を高め雇用を増やす持続可能な協同組合組織の組織・事業方式モデルを析出することが本研究の目的である。 平成27年度には、韓国済州道における茶企業と農業者協同販売組織、中国河南省信陽市の茶業専業合作社、日本の長崎県東彼杵茶産地の茶農業者と茶生産組合を調査し、共通して高付加価値化を図る品質管理のために組織的対応により技術高度化と販売のシステム化を図っていることが明らかになった。その結果の一部は、韓国の国際茶文化学会第75回学術大会等において発表した。 研究期間全体を通じた東アジア3カ国における実態調査によって、茶産地では、協同組織形成による零細農業者の農業産業化が進み、資本形成、資材調達、栽培技術水準の平準化、加工技術高度化、販売システム形成を内包した生産から販売までの統合化、農業者側からのサプライチェーン形成が取り組まれ、協同組織や企業組織による生産・販売統合化が農業者所得増大という経営効果をもたらすことを明らかにすることができた。 また、現代の農業産業化は産地に大規模な資本形成や販売システム形成を求めているが、それは日本と韓国においては総合農協によって実現し、中国では、多くの場合、地方の政府や企業によって実現しており、これらが東アジアにおける持続可能な産地農業形成の基礎的条件となっていることも明らかになった。
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