研究課題/領域番号 |
25450337
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
弦間 正彦 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90231729)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農業生産性 / 農産物価格 / 収束 / 経済統合 / 貿易自由化 |
研究実績の概要 |
本研究は、中東欧諸国などの新規加盟国を含むEU現加盟国と、東南アジアの体制移行国など1990年代に新規に加盟した国を含むASEAN加盟国の農業部門に焦点を絞り、EUやASEANなど地域経済統合や、自由貿易を目指したウルグアイラウンドや個別のFTAなどの国際的貿易の枠組み合意が、持続可能な農業発展のために必要となる総合生産性の改善や、食料の安全保障につながる国内・域内の農産物価格の安定に、必ずしも寄与していない理由を検証し、地域経済統合や自由貿易体制の構築が、農業発展と食料の安全保障に貢献するための政策・制度上の条件を考察することが目的である。 第2年度(平成26年度)には、初年度で明らかになった国グループごとの農業生産性の変化と農産物価格の変化を、CAPやASEAN、WTOやFTAの合意の枠組みの変化の中で、マクロデータを使用して理解する作業を実施した。EUの事例においては、多くの国における生産性の変化の要因が、類似する傾向があることが分かった。また、同時に、初年度で収集したフィールドデータを利用して、ベトナムのメコンデルタの事例に関して、家計・集落に対する生産構造の変化や農産物市場を取り巻く状況の変化に関するミクロ的な実証分析を、農業生産性の変化と農産物価格の変化を規定している要因を理解する目的で行った。それにより、家計の生産行動、消費行動、貯蓄行動には相互に関連があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、地域経済統合や自由貿易体制の構築が、農業発展と食料の安全保障に貢献するための政策・制度上の条件を考察することが目的である。これまでに、マクロレベルにおけるデータ分析はほぼ終了し、ミクロレベルでの検討を行っている。以下に述べる個別の内容についてさらに検証をする必要性があることが分かったが、これらについても今後の作業の工程は明確化されており、これまでのところほぼ計画通りに研究プロジェクトは実施されていると考える。 EUの事例においては、多くの国における生産性の変化の要因が、類似する傾向がある中で、異なった要因で生産性変化がみられる国があり、これらの国について個別の要因を検証する必要があることが分かった。 ベトナムにおけるミクロ分析においては、家計の生産行動、消費行動、貯蓄行動には相互に関連があることが分かったが、これらの行動を規定していると思われる時間選好率やリスク許容度とこれらの間の関係についてはまだ明確に実証していない。
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今後の研究の推進方策 |
ラオスとポーランドにおけるデータ収集とそのデータの分析を継続して行い、包括的な、またより一般的な政策的含意の導入につなげる計画である。 ラオスにおいては、共同研究グループ(ザバナケット大学副学長のSitha教授の研究チームと、ラオス国立大学農学部副学部長のSilinton教授の研究チーム)と共同で、サバナケット近郊、ビエンチャン近郊の家計・集落に対して、生産構造の変化や農産物市場を取り巻く状況の変化に関する聞き取り調査を継続して実施する。さらに、ASEANの事例については、農家レベルにおける詳細な生産構造・属性データが存在するLSMS(Living Standard Measurements Study)データも使用し、ベトナムとラオスという個別の事例について、生産性の増減を規定している理由と、農産物価格変動の原因を事例的に検証する。さらに同様の、聞き取り調査を、ポーランドの農業農村経済研究所所長であるKowalski教授の便宜供与のもと、ワルシャワの近郊の農村において行う。 上記で述べたEUの事例における異なった要因で生産性変化がみられる国がある理由に関する要因分析はポーランドを事例にデータ分析と、先行研究のレビューと聞き取り調査を行う計画である。また、ベトナムにおける家計の生産行動、消費行動、貯蓄行動と時間選好率やリスク許容度との関係についての分析は、データ分析を継続する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラオスにおける現地調査が、受け入れ側の都合で翌年度実施になったために発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
ラオスにおける調査を新年度の7月初旬に実施する計画となっている。
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