研究課題/領域番号 |
25450339
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
國光 洋二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所農村基盤研究領域, 上席研究員 (30360390)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | の行生産基盤資本ストック / 地域動学応用一般均衡モデル / 地域間交易 / 研究開発投資 / パネルデータ分析 / マルムクイスト指数 / トルンクヴィスト指数 / 全要素生産性 |
研究実績の概要 |
①農業生産基盤資本ストックの地域別直接効果(生産力効果)の評価 稲作生産及び畜産(酪農と肉用牛生産)における総合生産性指標である全要素生産性をトルンクヴィスト指数及びマルムクイスト指数を用いて定量化し、1979年から2010年までの38道府県(稲作)ないし9地域(畜産)の地域パネルデータを作成した。このデータをもとに、計量経済分析(時系列分析及び空間計量経済分析)の手法を適用して、各産業の全要素生産性に与える農業生産基盤資本ストックの効果を、研究開発投資や気象要因のような他の影響要因を考慮して推定し、これら要因の影響度に関する地域特性を解明した。 ②地域動学CGEモデルの構築 上記により推定したTFP関数を用いて、農業生産基盤資本ストックを内生化した地域動学CGEモデルを構築した。モデルは、16の産業部門の生産と消費、投資、政府行動を表す非線形の連立方程式からなり、日本の9地域における2005年以降の長期の市場均衡価格と均衡数量を予測できる構造となっている。また、モデルは、生産と消費段階での地域間の財の移動(地域間交易)を通じた空間的な経済波及状況を捉えることができる。モデルを用いて、財の地域間交易の柔軟性が高まった場合(価格変化に対応して財の移動が速やかに生じる場合)と柔軟性が低下した場合(地域間の価格差の解消に時間を要する場合)について、感度分析を実施し、財の地域間交易の柔軟性の向上は、直接的な消費行動よりは、産業における中間財需要を通じて市場に影響することを明らかにした。また、地域間交易の柔軟性が高まった場合は、特定地域のみで生じる農業生産基盤資本の老朽化の影響が、農業生産物の価格差としてよりも、農産物の生産量の地域差として発現する傾向が強くなることを定量的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①農業生産基盤資本ストックの地域別直接効果(生産力効果)の評価 当初の計画通り、全要素生産性に与える社会経済要因や農業生産基盤資本ストックの影響を実証的に分析し、その結果を2編の論文として学術誌(査読有り)に公表するとともに、5件の学会等の場で発表したことから、概ね順調に進展していると判断できる。 ②地域動学CGEモデルの構築 当初の計画通り、地域動学応用一般均衡モデルを作成し、その結果に基づいて1編の論文を学術誌(査読有り)に公表するとともに、5件の学会等の場で発表したことから、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
地域動学CGEモデルによる政策シミュレーション分析 地域別の農業生産基盤投資の動向やアセットマネジメント施策、さらにはPFI、団体営事業の活用等の民間活力の導入を想定した政策シナリオを作成し、地域動学CGEモデルによるシミュレーション分析により、将来の農産物産地移動等による地域農業や経済に対する影響を定量化する。アセットマネジメント施策に関しては、施設崩壊リスク変化による経済影響の地域差を予測する。シミュレーション分析の結果をもとに、農業生産基盤投資の地域間最適配分手法や民間活力の導入の得失をまとめ、地域農業の持続的発展に資する農業生産基盤整備に関する政策提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、タイ国で開催される予定であったRegional Science Association Internationalの世界大会が、クーデターの勃発の影響で中止となった。そのため、予定していた海外出張旅費と世界大会に合わせて開催が予定されていたWork Shopへの参加費、資料代等の支出できなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年8月にチリで開催予定の24th Pacific Conference of the RSAI (Pacific Regional Science Conference Organisation)に参加して、2014年度の研究成果をさらにバージョンアップした研究成果を発表する予定であり、その海外出張に要する経費として使用する。また、本年度までの研究で得られた成果をとりまとめて国際ジャーナルに投稿するため、ネイティブチェック等に要する経費として支出し、成果の普及を図る。
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