研究課題/領域番号 |
25450340
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
千田 雅之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター・営農生産体系研究領域, グループ長 (80370493)
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研究分担者 |
渡部 博明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター・営農生産体系研究領域, 上級研究員 (10370628)
吉川 好文 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域, グループ長 (20442783)
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 准教授 (50370622)
井上 憲一 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60391398)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集落営農 / 林畜複合 / 肉用牛 / 水田放牧 / 育林放牧 / 椎茸 / 経営評価 |
研究実績の概要 |
林畜複合経営については、調査対象地区とした大分県豊後大野市朝地町の放牧農家に引き続き聞き取りを行い、経営における放牧の取り組み状態、放牧を導入/縮小した経緯等をとりまとめた。これまでの調査も合わせて10戸程度のデータが得られ、経営的に合理的とされる放牧が採用されなくなるメカニズムや、農家間による対応の差異等について整理を進めた。 集落営農法人における水田放牧及び農作物生産との輪換利用については、調査法人を素材に放牧畜産を導入した営農計画モデルを構築し、放牧用地の団地化による周年親子放牧方式の確立により、水稲作に替わって放牧畜産が有利な営農部門となり、中山間農地の保全や法人収益の向上に寄与することを明らかにした。また、和牛改良組合と連携した牧草放牧と、ハトムギや大豆、水稲の水田輪作に取り組む集落営農法人の土地利用方式等の調査を行った。 また、集落営農放牧の成立過程と運営体制を、組織形態①~③の島根県内の3事例を対象に検討した。①集落営農組織が肉用牛繁殖部門を導入。②集落営農組織と肉用牛繁殖農家が1対1で連携。③複数の集落営農組織と複数の肉用牛繁殖農家が組織的に連携。その結果、成立過程と運営体制それぞれに、各類型の共通点(農村リーダーの牽引、耕畜間の役割分担)と相違点(徹底した試行錯誤、耕畜の放牧目的)が明らかとなった。 さらに、共同作業脱退、兼業リタイア、酪農転換等を契機とする繁殖牛15~50頭の小中規模の肉用牛経営(熊本県天草地域1戸、球磨地域3戸)を対象に、水田、飼料畑(採草)、果樹園跡地、茶園跡地、竹林・林野等の放牧利用を含む家畜の生産管理方式、放牧草地管理、及びそれに伴う資材費、維持・管理費などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アグロパストラルによる営農効果の解明については、樹園地や育林地、耕作放棄地、水田の放牧利用による営農面での効果を、林畜複合経営、集落営農法人、肉用牛繁殖経営事例を対象に明らかにしている。また、営農計画モデル構築による放牧導入効果を発揮するための条件の解明は、耕作放棄地放牧を行う肉用牛繁殖経営、水田放牧を行う集落営農法人を対象に評価モデルを構築し明らかにされている。放牧に伴うリスクについては、分散する小耕地を対象に移動放牧を行う経営において、流産等により繁殖率が低く畜産の収益性が低いこと等が明らかにされている。耕種経営と畜産経営の連携による放牧実施など、複数の経営体で構成されるアグロパストラルの運営方法の提示については、組織形態に着目して、役割分担や生産管理、経営成果の相違点を明らかにしつつある。 以上のように、当初の研究目的はおおむね達成されつつあるが、なお、以下の課題解明が残されている。典型的なアグロパストラル方式である林畜複合経営について、生産者間の林畜複合営農方式における生産管理や経営成果の相違等の分析、代表的事例を素材とする経営的評価モデルの構築、それらによる同方式の成立条件の解明、耕畜連携による円滑な放牧運営方式の提示である。
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今後の研究の推進方策 |
林畜複合経営の成立条件の解明については、調査対象地区の悉皆調査を完成させるとともに、放牧縮小の要因や農家間に対応の差異が発生する原因、地域的な放牧推進方策等を整理する。 また、代表的経営体の農作業日誌、簿記情報より集計した椎茸生産、放牧畜産の技術係数を基に複合経営計画モデルを構築し、林畜複合経営の成立条件を、経営資源の保有面(利用可能な林地面積、家畜頭数)、各生産物の価格面、生産管理技術面等から明らかにする。 さらに、集落営農放牧の組織形態が異なる3事例を対象に、放牧技術の違い、成立過程と運営体制のリンケージ、運営体制の変化の過程について追跡調査を行い、集落営農放牧の成立過程と運営体制についてさらに検討を深め、集落営農放牧の効果、リスクおよび継続面での課題について考察する。 これらの成果をとりまとめ、学会報告および査読付き学術雑誌等に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していなかった、革新的技術体系緊急展開事業「革新的畜産技術の経営評価研究」(平成26年~27年度)、委託プロジェクト「水田複合の新作型開発研究」(平成27年度)等の共同研究へ対応せざるを得なくなったこと等から、予定していた調査や分析、とりまとめ、公表を実施することができなかった。このため、執行額が当初計画より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、残された課題に対する現地調査、研究成果の学会誌投稿料等、研究計画遂行のために使用する。
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