研究課題
本研究は、開発途上国における、1)新しい農業技術の導入要因に関する分析、2)農村コミュニティ内の農業技術情報伝達構造に関する分析、3)貧困緩和に資する農業生産技術の導入・普及戦略に関する考察、により経済発展段階や地域特性に応じた、新しい農業生産技術の導入および普及メカニズムを明らかにし、貧困緩和に資する農業生産技術の効果的な導入・普及戦略に関する考察を行うことを目的とする。本研究は、インドネシア共和国、ルワンダ共和国を対象としているが、本年度は、昨年度に引き続き、ルワンダ共和国を主な対象して研究を実施した。また、当初、ルワンダ共和国における調査対象地として、同国東部県・カヨンザ(Kayonza)ディストリクト・ルカラ(Rukara)セクターを対象としていたが、同ディストリクト内のムイリ(Mwiri)セクターを比較対象地域として加えた。それぞれから120家計を抽出し、同地域の家計の経済状況および農業生産の状況を中心に、質問紙調査を中心に実施した。季節性を考慮するため、2014年8月および2015年3月の二回に亘り調査を実施した。またサンプリングにあたっては、それぞれのセクター内の地域(行政区分で最も下位のセル、およびその中に位置する村)から広く取得することに留意し、それぞれの地域の人口規模に合わせてサンプル数を決定するとともに、同時にGPSにより位置情報を取得し、地図や衛星画像等を用いることで、サンプリングの状況の確認を行った。また、同時に家計の構成員の体格データ、食料摂取状況等のデータも取得し、生産と消費の非分離性を特徴とする開発途上国農村の家計内資源配分に関するデータを取得した。現在、取得したデータに関して解析中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、前年度の調査内容(調査票の設計・作成、農家調査)をもとに、パネルデータ構築のための農家調査継続、前年度の農家調査の結果を使用したクロスセクション分析を行うことを当初目標としていた。本目標に対して、本年度は特に、調査対象国のひとつであるルワンダ共和国にて、2014年8月、2015年3月の2度にわたり調査を実施した。さらに当初は、同国・東部県・カヨンザ(Kayonza)ディストリクト・ルカラ(Rukara)セクターのみを調査対象としていたが、データの代表性等を鑑み、同ディストリクト内のムイリ(Mwiri)セクターを比較対象地域として加えた。研究を進めるなかで、、特に、1994年の大虐殺を頂点とするさまざまな特有の事象を有するルワンダ共和国では、季節性、地域性、さらには地域ごとの歴史的背景等をも考慮した詳細な分析を実施することが必要であることが明らかとなり、当初計画にはなかった新たな調査地を加えた。本研究は、ルワンダ共和国のみでなく、インドネシア共和国も対象としているが、当初目標を踏まえると二国を同時に対象とするのではなく、一国について、特に研究蓄積の少ないルワンダ共和国を対象とすることが学術・貧困緩和に資する政策の両面で重要との認識に至った。また、前年度の調査結果を使用したクロスセクション分析に関しても、現在分析・とりまとめ中であり、次年度は複数の国際学会での発表、国際誌への投稿を行う予定である。以上より、本研究は、研究計画の見直しがなされたものの、おおむね順調に進展している。
本研究は、農家による新品種を含む新しい農業技術の導入要因について、a)リスク回避度、b)信用制約、c)社会的学習の三点が主要因であるとの仮説を設定し定量的に分析・検証することを具体的な手法として設定しており、これまで、これに基づいた調査を実施してきている。次年度は最終年度ということもあり、これらの分析を引き続き行い、複数の国際学会での発表、国際誌への投稿を目指す。また、本研究のもう一つの目標である、農業生産技術の効果的な導入・普及戦略の実際のフィールド(ルワンダ)への適用、に関して、現地協力機関であるWorld Vision Japan、World Vision Rwandaと協議しながら進めていくこととする。
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Social Science and Medicine
巻: 130 ページ: 135-145