研究課題/領域番号 |
25450349
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研究機関 | 九州共立大学 |
研究代表者 |
横川 洋 九州共立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30007786)
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研究分担者 |
高橋 佳孝 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, その他 (80370625)
矢部 光保 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20356299)
ニーフ アンドレアス 京都大学, その他の研究科, 教授 (60618297) [辞退]
磯野 誠 鳥取環境大学, 経営学部, 准教授 (50550050)
長野 史尚 九州共立大学, 経済学部, 講師 (10412579)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農耕景観 / BSCマネジメント / 文化的景観 / 生物多様性 / CVM / 顧客価値 / イベント論 / 草資源循環 |
研究実績の概要 |
平成26年度での研究進展状況は、次のとおりである。 本研究の統合的課題であるBSCマネジメントに関しては、磯野誠分担者を中心に横川洋代表者、長野史尚分担者がワーキング・グループで前年度のたたき台を改良し、8月の全体研究会で全メンバーと阿蘇市世界文化遺産推進室室員等のコメントを得て、さらに改良を重ねた。 個別課題研究では、高橋佳孝分担者は「盆花」という草原文化の存在が生物多様性保全上も重要であることを実証する研究に従事し、盆花を指標とすれば草原管理の健全性と生物多様性を比較的容易に、省力的に評価できることを明らかにした。矢部光保分担者は15年前に実施したアンケートと同じアンケート票で当時とほぼ同じ母集団に対してCVMによる阿蘇の生物多様性の便益評価額調査を行い、回答者の所得変動分を考慮すればほぼ同じ評価額を得て、CVMによる評価額の安定性と政策ツールとしての有効性を確認した。磯野分担者は阿蘇文化的景観の顧客価値の理解のため、景観から顧客が受ける審美経験に対する定性調査を実施し、仮説を導出した。長野分担者は南阿蘇鉄道を事例にイベント論的考察を行い、単体として営まれている現行イベント方式よりもターゲットを絞り協力体制を築くことがさらなる発展につながると提案した。研究協力者のアンドレアス・ニーフは野焼きにおける人々の参加型マネジメントに関する実地調査を野焼き現場で行った。 代表者横川は統合的課題であるBSCマネジメント研究のワーキンググループ統括を行うと共に、個別研究として草原と農地との間の草資源の循環の実態調査を重点的に行い、阿蘇地域における草原ーあか牛ー農地との草資源循環が阿蘇農耕景観の生態系サービスをもたらすという原理に対する確信を得て、阿蘇農耕景観と生態系サービスの持続的発揮を生み出す基盤としての「生業」(農林畜産)の持続可能性を担保する諸要因に関する体系的記述を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は客員研究員という時間的に自由な身分で調査研究がやりやすく、しかも、阿蘇市の世界文化遺産推進室が組織する文化的景観調査検討委員会委員・阿蘇環境デザイン策定委員会委員・食農産業検討部会アドバイザーとしての調査活動のために現地調査が行いやすいため、研究チームを引っ張って行くことができたし、個別研究もスムーズに進展した。阿蘇市の委員会委員は最終年度であったが、本科研による調査研究の知見は委員会での発言や「阿蘇の文化的景観」保存調査報告書の分担執筆を通して委員会審議に貢献することができたし、逆に科研の研究に大きな示唆と刺激を与えてくれた。 また、高橋佳孝分担者は環境省の阿蘇草原再生協議会会長及び全国草原再生ネットワーク代表として、草地生態学の視点からの調査研究を阿蘇の草原について常時実施しているため、代表者の良きパートナーとして研究チームを引っ張っていただいた。 研究分担者もそれぞれ大学業務多忙な中、阿蘇農耕景観、阿蘇文化的景観に関する研究に大きな情熱をもって研究を進めていただいている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるので、研究の取りまとめに重点を置きたい。 BSCマネジメント研究についてはほぼ原案はできたので、その完成に急ぎたい。 研究分担者の個別研究は、それぞれの計画に従って進行するものと考えている。代表者としては常時、分担者と連絡を取り合って統括者としての役割を果たしたい。 研究成果のとりまとめは、さし当り「科研報告書」としての取りまとめを計画しているが、可能であれば、本年度の科研の学術図書出版助成金への申請を行い出版したい。今年度申請可能かどうかの見極めのため、8月に全体研究会を行う予定である。メンバーには学術図書出版助成の科研申請に間に合うように原稿執筆を促している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2名の研究分担者の残額として30,686円が生じた(調査予定が急きょキャンセルされた等)。
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次年度使用額の使用計画 |
この繰越額は2名の研究分担者が予定配分額に加算して使用する。
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