研究課題/領域番号 |
25450350
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
新谷 正彦 西南学院大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (70069706)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会経済調査 / 女子高等教育 / トリートメント効果 / 賃金所得関数 / サンプルセレクションモデル / プロビットモデル / 恒常所得仮説 / ライフサイクル仮説 |
研究実績の概要 |
タイの中央統計局が実施した社会経済調査の2012年と2013年との個別結果表を入手できた。これら個別結果表と、過去に入手した年次の個別結果表と併せて、ミンサー方程式を拡張した賃金所得関数を計測し、教育投資の収益率を再推計した。また、女子高等教育のトリートメント効果を組み込んだ賃金所得関数を、サンプルセレクションモデルを組み込んで、再計測し、女子高等教育の効果を再確認した。この成果は、アジア成長研究所の機関誌に採用、掲載された。加えて、恒常所得仮説とライフサイクル仮説とを勘案した家計の貯蓄関数の計測おこなった。計測結果は、TEA2015年春期大会で報告した。貯蓄関数の計測結果について、その概要を以下に記す。 世帯主の年齢によって、1990-2011年の期間の調査年のタイ国の家計費調査の平均値で貯蓄率を観察すれば、タイの家計の消費・貯蓄行動に対しても、ライフサイクル仮説が妥当しそうであった。しかし、個別サンプルを観察すれば、支出の変動より所得の変動が大きく、ライフサイクル仮説のみで、タイの家計の消費・貯蓄行動を説明できないと思われた。したがって、恒常所得仮説とライフサイクル仮説とを合わせた貯蓄関数の計測を試みた。まず、所得関数を計測し、そのパラメータを用いて各サンプルの恒常所得と一時所得とを推計し、この推計値を用いて貯蓄関数の計測をおこなった。貯蓄関数の計測結果は、統計的にも、経済理論的にも良好な結果であり、大きな所得変動に対して小さな消費の変動、すなわち、消費の平滑化を説明するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた資産形成関数の計測と資産形成の限界収益率を推計、固定資産形成に関するプロビット関数の計測と固定資産投資に関する資本制限の存在を明らかにすると、および、家計の労働供給関数の計測と都市家計と農家家計との労働供給行動の差異を明らかにし、都市と農村間の所得格差の原因である労働所得の格差の原因を明らかにすることができなかった。出来なかった理由は、研究課題の対象が多すぎたと思われる。なお、資産形成に関する研究は、計算途上にあって、まとまった形で、発表できところまで進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度に計画していた未完の研究を遂行する。すなわち、タイの社会経済調査の個別結果表を用いて、資産形成関数の計測と資産形成の限界収益率の推計をおこなう。また、固定資産形成に関するプロビット関数を計測し、固定資産投資に関する資本制限の存在を明らかにする。加えて、家計の労働供給関数を計測し、都市家計と農家家計との労働供給行動の差異を明らかにし、都市と農村間の所得格差の原因である労働所得の格差の原因を明らかにする。 加えて、インドネシアの社会経済調査の1993年、96年、99年、2002年、2005年および2008年のモジュール部分(3年毎に所得と消費支出が詳細に調査されている)を用いて、疑似パネルデータを作成する。そして、家計の貯蓄関数と資産形成関数とを計測する。そして限界貯蓄性向と、資産形成の限界収益率を推計する。また、固定資産形成に関するプロビット関数を計測し、固定資産投資に関する資本制限の存在を明らかにする。インドネシアの家計の労働供給関数を計測する。そして、都市家計と農家家計との労働供給行動の差異を明らかにする。 そして、タイとインドネシアとの分析結果を比較し、タイの分析結果を鮮明にする形で、研究結果をまとめ、農村の貧困解消のために実施可能な政策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2013年度に、タイ国において反政府グループの官庁街封鎖により、過去に入手済みの社会経済調査個表の修正データの入手と、新規に購入予定の社会経済調査個表の入手とが遅延することになり、使用予定の予算実施が出来ず、残余が生じてしまった。この残余相当分が、2014年度においても使用できずに、残ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度当初予算は、計画通り使用する。2011年のインドネシアの社会経済調査個表のモジュール部分は、以前の研究費で購入したが、経済部分の調査が不十分で使用できず、2012年以降の社会経済調査のコア部分も調査項目が変更になり、これを使用して過去の研究と接続できなくなった。接続可能な情報が労働力調査に含まれているので、2014年度の未使用予算で、労働力調査の個表を購入し、社会経済調査の未接続部分の研究を補完する計画である。
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