研究課題
近年,使用が全面禁止となった臭化メチルに代わる新たな土壌消毒技術の一つとして注目されている熱水土壌消毒について,熱水の施用が団粒に代表される土壌の構造に与える影響や,構造の変化による関連する透水性などの土壌の物質移動特性の変化を明らかにすることを目的とした.土壌団粒とは,粘土やシルトといった粒径の小さな土粒子が,土中の糖分などの有機物などにより結合してできた土塊であり,団粒構造が発達は土壌の物理的肥沃度のためには不可欠である.本研究では,この団粒構造の安定性の温度依存性について,様々な温度下での二段階湿式ふるい分け法を提案した.その結果,団粒径が大きくなるにつれて温度の上昇とともにその安定性は低下し,60℃での湿式ふるいでは40%の団粒が崩壊した.また,安定性の低下の要因については,ふるい分け時に水中へ溶出した土壌糖分をアンスロン-硫酸法により求めた.その結果,温度の上昇とともに土壌糖分の溶出量の増加が確認でき,団粒の安定性に土壌糖分が寄与していることが示唆された.一方で,比較的安定的であった団粒径の小さな団粒についても土壌糖分の溶出が多く確認でき,ミクロ団粒とマクロ団粒とでは構造等の性質が大きく異なることが考えられた.また,圃場での熱水施用の際に熱水の浸潤過程の定量的なモニタリング手法について,アレイ地中レーダー(GPR)を用いる方法を提案し,現場実験を行った.アレイGPRは,複数の送受信アンテナより構成され,汎用的な単対アンテナGPRと異なり,アンテナを動かさずに様々なアンテナの組み合わせ電磁波電波速度を算出するためのマルチオフセットギャザーについて,極めて短時間にデータが取得できる特徴をもつ.砂丘砂実験圃場での検証の結果,浸潤前線の位置を1.5秒ごとに取得が可能となり,熱水施用下での熱水の到達深度を正確に把握することが可能となる手法が得られた.
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Agricultural and Environmental Letters
巻: 1 ページ: 1-4
10.2134/ael2016.01.0002