研究課題/領域番号 |
25450364
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
籾井 和朗 鹿児島大学, 農学部, 教授 (40136536)
|
研究分担者 |
伊藤 祐二 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60526911)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 農業用水資源 / 水温成層 / 部分循環 / 全循環 / 乱れエネルギー / ポテンシャルエネルギー / 溶存酸素 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究では,温暖な気候条件下にある農業用水資源としての池田湖を対象に,過去37年間の水温,溶存酸素,植物プランクトン,透明度などの観測結果,本研究での集中観測結果,および数理モデルによる解析結果に基づいて,池田湖の水質変化の特徴を明らかにすることを目的としている.本年度は,①集中観測の継続,②池田湖の熱環境の変化傾向に及ぼす影響因子の解析および③数理モデルパラメータと鉛直混合解析方法の検討を行った。①に関しては,前年度と同様に,水深10~200 mにおける水温および溶存酸素の多点連続観測(サンプリング時間間隔1時間)を行った。また,透明度も月1回の観測を実施した。②に関しては,1978~2013年の池田湖において,(1)平均水温の上昇傾向,(2)成層強度の増大傾向,(3)サーモクライン深度の深化傾向,(4)正味放射量と潜熱量の増大傾向を明らかにした。また,それらの変化傾向に最も影響を及ぼす因子は,それぞれ(1)気温,(2)気温,(3)透明度,(4)日射量であることを明らかにした。③に関しては,2013~2014年の集中観測結果によれば,数理モデルで必要な深層の溶存酸素消費速度は概ね0.004 mg/L/dであること,および鉛直混合時における水温と溶存酸素の時間変化は類似しており,同一の輸送係数が適用できることがわかった。また,風により発生する湖水中の乱流運動による下層水の連行現象を,数理モデルに組み込むために,湖水温分布に基づくポテンシャルエネルギーを試算した。2011年の全循環時では,風による乱れエネルギーがポテンシャルエネルギーの増分より大きくなる傾向にあること,一方,2014年の部分循環時では,ポテンシャルエネルギーの方が乱れエネルギーより大きくなる傾向となった。従って,風に起因する乱れによる連行過程を数理モデルに組み入れることで,鉛直混合現象の評価が可能と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水温と溶存酸素の数値解析の準備がやや遅れているが,当初計画した検討項目は,概ね達成している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度試算した風に起因する乱れエネルギーと水温分布によるポテンシャルエネルギーの評価法を,数理モデルに組み込み,水温と溶存酸素の鉛直混合過程について検討する。特に,数理モデルでは,湖面上の風が鉛直混合に主な影響を及ぼすことから,周辺気象台と湖面上の風との相関について,現地データを収集し検討する。また,鉛直混合に関し,1986年以降25年ぶりの全循環(2011年)と近年の部分循環(2014年,2015年(継続観測))の相違について,乱れエネルギーとポテンシャルエネルギーの比較により検討する。さらに,池田湖内の無機栄養塩濃度と植物プランクトンの群集構造のデータを収集,解析,整理し,地域温暖化傾向がそれらの時空間変動に及ぼす影響について検討する。最終年度のため,成果は,水文学に関する国際会議等において発表するとともに,地域温暖化傾向が農業用水資源としての池田湖に及ぼす影響についてとりまとめる。
|