研究課題/領域番号 |
25450364
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
籾井 和朗 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (40136536)
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研究分担者 |
伊藤 祐二 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60526911)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 全循環 / 湖水温 / 溶存酸素 / クロロフィル / 栄養塩濃度 / 乱れエネルギー / ポテンシャルエネルギー / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究では,まず,対象湖の鉛直上下混合に関し,1986年以降25年ぶりに発生した2011年の全循環と近年の部分循環について,湖水のポテンシャルエネルギーと風に起因する乱れエネルギーにより検討を加えた。特に,対象地域の気温上昇率が,1977~1999年に比べて2000~2013年では一時的に停滞していることに着目し,現状の気温変化(現状)と,1999年までの気温上昇が2000年以降も継続した場合(シナリオ)について,数値計算により考察した。現状に比べて,シナリオでは,全循環発生年冬期のポテンシャルエネルギーが,風による乱れエネルギーより大きくなることがわかった。すなわち,シナリオの場合には,湖水の安定度が増し,2011年の全循環は発生せず,その結果,深層の溶存酸素の増加が見込めなかったと推察される。地域特有の気温上昇傾向が湖水の水循環や水質変化に及ぼす影響を定量的に評価することができた。 次に,最近2年間の現地観測により,サーモクラインまたは有光層下端と概ね同じ位置で生じるクロロフィル蛍光値の極大現象が見られた。これは貧栄養で水深の深い池田湖特有の現象と考えられた。池田湖ではサーモクライン深度は増大傾向にあり,その主因は透明度の増大傾向による。したがって,植物プランクトンの生存領域は近年拡大している可能性がある。一方,溶存無機態窒素は,表層よりも深層のほうが高濃度であり,主に流域から地下水とともに流入していると考えられた。冬季の鉛直循環は,下層の窒素を表層に輸送し,表層への重要な栄養塩供給を担っていた。したがって,温暖化により鉛直循環が弱化すると,表層への栄養塩供給が抑制されるだけでなく,深層に栄養塩を蓄積し,クロロフィル極大の規模をより拡大させる可能性がある。現地観測結果に基づき,地域温暖化傾向が植物プランクトンと栄養塩濃度の時空間変化に及ぼす影響を考察することができた。
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