本研究では,対象地域の温暖化傾向が,地域の農業用水資源である湖水の質及び鉛直循環に及ぼす影響を,現地観測と数値解析により検討した。湖水の循環に関しては,2000年以降の対象地域固有の気温上昇の一時的停滞により,湖水のポテンシャルエネルギーが低下し,風による乱れエネルギーが相対的に大きくなったため,1986年以来の全循環が2011,2012年2月に発生したことを数値解析により明らかにした。水質に関しては,対象地域の気候変化に基づく熱環境変化特性により,下層で富栄養化とクロロフィル極大が進行する可能性があるが,リン濃度が極端に低い現状では,赤潮のような環境異変が生じるリスクは低いことを指摘した。
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