研究実績の概要 |
魚を始めとする食品の包装に用いた発泡スチロールには、特有の臭気が付着する。魚を梱包した発泡スチロールの場合、その主成分はトリメチルアミン(TMA)と考えられるが、その他にも非常に多くの臭気成分が付着している。このため、一般に、生鮮食品の梱包に用いた使用済み発泡スチロールのリサイクルでは、この臭気除去が問題となる。単に溶媒で溶かして再生するだけではその臭気はとれず、リサイクル発泡スチロールは食品の包装に再利用することは困難である。この研究では、臭気除去が特に難しいとされる魚介包装に用いた使用済み発泡スチロールの臭気除去方法について検討した。平成25年度は臭いの種類とその強度を、スニッファー付きガスクロマトグラフを用いて人の官能によって評価した。また、近赤外分光器を用いて、臭気が付着しているものと、付着していないものとのスペクトル比較を行って、臭気成分にかかわる波長を調査した。平成26年度は、発泡スチロールに付着した悪臭を抑える方法の1つとして、臭気成分よりも人の官能にとって優位に感知される匂いを有する物質を用いて臭気の実質的な影響を低減する、マスキング法について検討した。高知県産の柑橘数種を用い、その抽出物でマスキングした結果、完全除去とまではいかないが、スニッフィングの結果、残存臭気の強度が弱くなることが明らかになった。さらに最終年度では、マスキングに有効な柑橘抽出物の成分について、中赤外データベースを利用して物質同定を試みた。その結果、D-Limoneneのほか、スペクトル類似度の推定で(+)-p-MENTA-1,8-DIENE、2-5-DIMETHYL-1,5-HEXAIENEなどが推定された。また化学中和法についても平成26年度に引き続いて検討したところ、ゲージ圧で0.3~0.5気圧程度の加圧下での処理によって、臭気の中和低減効果を上げることができた。
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