研究課題/領域番号 |
25450376
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田辺 隆也 茨城工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 教授 (70390408)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LED / 花き植物 / 光環境 / 蛍光 / 人工環境 / 伝達関数 / 色艶 / 光制御 |
研究概要 |
光源として異なった色のLED発光を利用して、カーネーション、シクラメン、サルビアレウカンサについて、人工環境における花の形状、色艶の分析を行うとともに紫外線による蛍光特性の測定により、花の開花特性について定量的に評価を行った。 まず、シクラメンについては、赤色LED光、青色LED光、自然光を照射して栽培するとともに、栽培環境を入れ替える実験を行った。3つの生育光環境区で栽培した植物で励起光により蛍光強度およびその分布が変化することが分かるとともに、生育する光環境区を変化させた後14日後に測定した蛍光強度が変化し、新しい生育環境の特性を示すことが分かった。本結果より、蛍光特性により植物の栽培環境変化を測定できることを明らかにした。また、サルビアレウカンサについては、青色の花の色に対する照射LED光の影響を調べたところ、青色の成分を含んだ白色LED光、青色LED光で栽培したものの花の色が濃くなるという結果が得られた。さらに、カーネーションについては、赤色および白色LED光で栽培したものに対して、緑色LED光で栽培したものは花の色が薄くなり、新しい花芽が育ちにくいことがわかる。また、青色LEDで栽培したものは花の数が少なく、花芽の成長が抑えられるという結果となった。これらの結果を基に、花き植物の光環境を表す伝達関数として、1次遅れ要素と2次遅れ要素を組み合わせた特性で表現する簡易なモデルを構築した。また、この簡易なモデルによる特性を測定・評価できるようにするために、蛍光測定装置の励起光を変調できるようにし、蛍光の遅れ現象を検出できるようにする検討を行った。 また、人工環境器用のサイドから照射するLEDを用いた発光装置を作製するとともにハウス用集光型発光装置に対して、光学的設計、熱設計を進め、装置の試作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に人工環境器を整備して、光の質と光強度とによる照射特性の分析と花の光環境対応力の分析を各種LED光の光強度、照射位置を変えながら、定量的に評価することを目標として進めた。花の評価対象としてカーネーション、シクラメン、サルビアレウカンサについて評価を行い、光環境と花の形状、色との関係を定量的に明らかにできている。なお、花の艶については、単純な画像処理では定量化が難しいことがわかり、新たな評価手法の検討を開始した。また、蛍光特性に関しては光環境の違いを明らかにできることが分かったので、さらに測定精度を向上させるための励起光の変調方式についての検討を開始した。また、人工環境器内の部分照射用のサイド照射LED発光装置を作製するとともにハウス用集光型発光装置に対して、光学的設計、熱設計を進め、装置の試作を行った。 理論的には、光環境での伝達関数として、1次遅れ要素と2次遅れ要素を組み合わせた簡単なモデルを組み立てることができており、測定との比較において更なる定式化を図ってゆく道筋を付けることができている。初年度としては順調に推移していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、研究計画の通り、花き植物として矮性植物に対する影響を調べるとともに、花の艶を評価する簡単な手法と蛍光測定の高精度化を行う。また、ハウス栽培の商品価値の高い花き植物に対する光照射実験を行い、植物の開花に対する光照射の影響の分析を行う。このハウス栽培には、平成25年度に開発したハウス用集光型発光装置の試験運用を行い、装置の改良を進める。 さらに、花き植物の各波長光に対する応答特性の変化と応答時間特性の分析とともに集光強度による開花への影響の分析を行うことで、植物の開花に関する各波長の光の光受容特性の伝達関数とその光環境対応力の基本特性を明らかにした伝達関数モデルを作成し、実験との比較により植物の開花時の特性を定量的に明確化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月に使用した人件費が翌年度支出になっていることと、旅費がかからなかったことによる。 設備備品としては、予定通り全体のコントロールをする制御システムを立ち上げるとともに花き植物栽培用のLED照射装置を作製する。また、旅費等においては、前年度に残った旅費を含めて、国内開催および国際開催の学会で発表するための旅費として使用する。
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