無触媒メチルエステル化法(過熱メタノール蒸気法)の更なる生産コスト削減(生産性向上)を目指し、安価な原料脂質の探索、原料油脂の改質およびCFD解析を用いた反応槽構造の最適化に関して検討した。 高い反応速度が得られる遊離脂肪酸を大量に得るため、酵素を利用し油脂(トリグリセリド)から遊離脂肪酸に変換できた。しかし実用化する際にはBDF生産に要する工程数の増加および高価な酵素の有効利用法などを検討する必要がある。CFDによる数値計算の結果より反応槽内に邪魔板を付設することでメタノール蒸気と油脂の接触面積は増大でき、反応実験でBDF製造速度も高まることを確認した。特に、多段で邪魔板を付設するとBDF製造量は5倍以上に向上した。このことから、メタノール蒸気の吹きこみを最適化することでBDF製造速度を高め製造コストを低減できることが明らかになった。油脂精製工場では精製時に遊離脂肪酸を除去する脱酸工程で副生成物が一定量が発生している。パーム油ではパームワックスが発生している。しかしながら、パームワックスはアルカリ触媒法でBDFに変換することができず、常温で固体となるためハンドリングにも課題がある。試作した大型のベンチスケール反応装置により、加熱融解したパームワックスを原料に反応実験を行った結果、既存の反応装置と同様に高い反応速度が得られることが確認できた。 以上より、遊離脂肪酸を主原料とするパームワックスを利用することで脂質の変換に余分なコストを掛けることなく安価でBDFを製造できる可能性が示された。また、CFD等の結果を基に反応槽を改良することで反応速度を向上させ、さらに低コストでBDFを製造できると思われる。
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