研究課題/領域番号 |
25450384
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 雄一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20373285)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオセンシング / テラヘルツ波 / 細菌 |
研究概要 |
本研究では入射する電磁波の波長と同程度の周期をもった金属構造体が、金属表面で生じる共鳴現象により微小な誘電特性の変化を高感度に検出できるセンサとして機能することを利用し、細菌の定量・定性実験を通じて迅速な細菌検査技術への応用可能性を明らかにすることを目指す。 平成25年度は、まず細菌を濾過により抽出して定量する簡易総菌数検査を想定し、①細菌やフィルターの光学特性(吸収影響)のデータベース化、②金属周期構造体を用いたセンシング能の評価、③電磁界解析による周期構造と検出感度の関係の考察を行った。細菌を捕集可能な精密濾過用のメンブレンフィルターはテラヘルツ帯で吸収ロスが非常に小さく、適した基材として用いることができた。またメンブレンフィルターの透過率では細菌の有無を有意に識別することができなかったのに対し、金属周期構造体に密着させることで菌数に応じた透過スペクトルの変化が見られ、1.5×10^5/mm^2以上の菌数を検出することに成功した。これは金属表面近傍に生じた増強電場内にターゲットを配置することで誘電特性の変化を効率よく検出できたためである。また異なる寸法の金属周期構造体を用いて同様に検出を行い、寸法によって検出感度が異なることが確かめられた。電磁界解析による検討の結果、これは電場が局在し感度の高い領域が金属の寸法に比例して変わるためであり、波長30μmの波長でその領域は2μm程度であることが明らかとなった。 25年度はこの他に、本センサによる細菌の特異的(選択的)な検出を目指し金属表面に直接抗体を固定して検出可能性を評価するとともに、菌種判定技術への発展を目指して細菌培養環境の整備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年間で簡易総菌数計測と菌種判定計測を行う計画となっている。現在、簡易総菌数計測においては基礎物性データの収集と計算による裏付けとして、光学特性(吸収影響)の評価と電磁界解析による金属周期構造の形状検討が済んでいる。また2年目の実施内容に先立ってセンサの前処理として金属表面への抗体固定プロトコルの検討を進めている状況であり、初年度の達成度としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の解析結果を基に協力企業や学内の設備を用いて金属周期構造体を試作する。またモデルサンプルなども用いて、金属周期構造体のスペクトルを測定し特性を評価した後、以下の各実験に取り組む。 「簡易総菌数計測」は、飲料中の細菌検出を想定しており、フィルターにて濾過された大腸菌をフィルターごと金属周期構造体の上に密着させ、分光装置で透過測定を行う。一般細菌数の場合、水道法によって1 mL中100以下であることが定められている。そこで本実験ではどの程度の大腸菌数を検出できるかを評価するために約100/mLに調製したサンプルを作成し、どれくらいの量を濾過した段階で検出できるかを確認する。 「菌種判定計測」では、平成26年度に赤外領域の量子カスケードレーザー(QCL)を用いた実験系の構築にとりかかり、平成27年度に行う定量性及び定性評価の準備を整える。QCLの動作周波数帯域は、電磁界解析による形状の検討結果と、金属周期構造体が作成可能な寸法とを考慮して選定する。また本計測手法では金属周期構造体の表面に抗体を固定化する必要があるため、並行して表面修飾プロトコルの検証を行う。シランカップリングを介して固定したビオチン・ストレプトアビジンを反応させて基板層に任意の抗体を固定化することで反応層を作成する予定である。 平成27年度には実際に食品を用いて細菌の菌種判定を実施し、夾雑物の影響を検証する。また以上の研究についてとりまとめ、研究の総括を行う。
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