研究課題/領域番号 |
25450387
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
佐野 元昭 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授 (90206003)
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研究分担者 |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80257427)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物の水ストレス / ハイスピードカメラ / 減衰振動 / 固有振動数 / 葉のしおれ / 非侵襲 / 超節水 / 植物工場 |
研究実績の概要 |
植物の水ストレスと葉の固有振動数との関係を明らかにするために、本研究課題では、葉の振動モードごとの固有振動数が、植物の水ストレスの増加と共にどのように変化するかを調べており、ハイスピードカメラによって葉の各部の振動変位を同時計測し、それを解析することで、葉の振動モードの分離を試みている。 その実験として、今回、発芽後約1箇月の鉢植えの小松菜を用い、水切り後の葉を定期的に振動させながら、その減衰振動の様子を本助成金で購入したハイスピードカメラを用いて500fpsで撮影し、振動モードを分離するために、1.葉の中心、2.先端、3.葉柄付近、4.左端、5.右端の5箇所の振動を解析し、「葉柄を含む葉全体の振動」(葉柄のたわみによる振動)と「葉自身のたわみ振動」のそれぞれの固有振動数を求め、それらが水ストレスの増加と共にどのように変化するかを調べた。また、対照実験として水切りを行わない株についても並行して計測した。 その結果、水ストレスによる葉の固有振動数は、葉柄を含む葉全体の振動と葉自身のたわみ振動では、萎れる寸前の振る舞いに大きな違いがあることが分かってきた。すなわち、葉柄を含む葉全体の振動では、葉全体がうなだれ始めると、固有振動数が急激に落ち込む様子が観測されるが、そのような状況でも、葉自身のたわみ振動の固有振動数の方は、萎れと共に徐々に減少するものの、急激な変化は観測されなかった。 このことから、植物の水ストレスを推定するには、葉自身のたわみの固有振動数を計測するよりも、葉柄を含む葉全体の振動の固有振動数の方が、より敏感であることが示唆される。これは、ハイスピードカメラ等で多点計測して複雑なモードを調べなくても、1点計測あるいは葉全体の代表的な固有振動数を測れば植物の水ストレスが推定できることを示す(裏付ける)結果であり、実用を考えた際の単純化、低コスト化につながるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、葉全体の振動と、葉自身のたわみ振動とを分離し、それぞれの固有振動数が、水ストレスの増加と共にどのように振る舞うかを示すことができた。ただし、計測の自動化については未完成であり、そのため、萎れの近傍における各モードの固有振動数の振る舞いは測定できていない。自動化は今年度完成させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ハイスピードカメラによる振動計測は、現在のところ自動化されておらず、そのため、長時間計測の際の計測間隔が長く、特に、深夜や早朝の計測点がない。ところが、急激なしおれは、日の出とともに早朝に起きることが多く、現在、その萎れの瞬間の振る舞いを捉えることに成功していない。 そこで、ハイスピードカメラの製造元から計測ソフトのSDKを購入し、自動化を進める予定である。またそれを用いて、各振動モードにおける固有振動数がしおれと共にどのように変化するかのより精密な実験を行い。葉自身のたわみの固有振動数が、急激なしおれの前後でどのように振る舞うかを確認する予定である。そして、葉自身のたわみの固有振動数より、葉柄を含む葉全体の固有振動数の方が急激な萎れに敏感であることを確認し、今後の実用化に向けたコストダウンについて提案したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計測の自動化がH27年度に延びたためと、それに伴い、研究補助員の採用を延長する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
自動計測化を行うためのSDK購入費(10万円強)、計測を継続するための研究補助員の人件費、研究用の消耗品、研究成果の公表(学会発表、論文投稿)等に使用する。
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