植物の水ストレス(作物給水ニーズ)を地上部の葉の萎れから実時間・非侵襲で推定する方法として、萎れによる葉の固有振動数の変化が利用できないか研究を行った。 先行研究として、我々は、切り取った葉身のたわみ振動の固有振動数が、萎れに伴い小さくなることを確認していたが、茎についたままの葉について同様の計測を行った場合、葉身自身のたわみ振動のほか、葉柄のたわみによる葉全体の振動などの振動が存在する。そこで本研究では、ハイスピードカメラにより幾つかの特徴点の運動を追跡し、各点の運動から葉身自身のたわみ振動と葉柄のたわみによる葉全体の振動を分離し、植物の水ストレスに最も敏感に反応するのは、どのような振動の固有振動数かを明らかにすることを目的とした。 その結果、葉身自身のたわみ振動の固有振動数は、葉がしおれてきても大きな変化がないが、葉柄のたわみによる葉全体の振動の固有振動数の方は、萎れとともに大きく減少することが分かった。 さらに、研究を進める中で、葉の固有振動数は日周変動し、健全な葉の場合、固有振動数は日中が大きく夜間が小さいことが明らかになってきたが、この日周変動が葉身自身のたわみ振動に由来するのか、葉柄のたわみによる葉全体の振動によるものかを調べるために、最終年度において、半日間にわたり1時間おきに計測を行った結果、葉身自身のたわみ振動の方には明確な日周変動は見られなかったが、葉柄のたわみによる葉全体の振動の方には明確な日周変動が観測されたので、この日周変動は専ら葉柄のたわみによることが示唆された。 以上より、植物の水ストレスにより影響されるのは、葉身自身のたわみによる固有振動数ではなく、葉柄のたわみによる葉全体の固有振動数であること、また、固有振動数の日周変動も、葉柄のたわみによる葉全体の振動が大きく関係していることが分かり、潅水制御を行う際はこれを計測するのが有効であることが分かった。
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