本年度においては、昨年度に明らかにしたCNPによる初期胞状卵胞のアポトーシス抑制効果について、さらにこの効果に関連する因子を同定することを試みた。 まず、昨年度実施したリアルタイムPCR法による断片化DNAの定量にくわえて、培養卵胞の切片をもちいたTUNEL法によるアポトーシスの評価を行った。その結果、CNPを添加することで卵胞の顆粒層細胞に特異的なアポトーシス陽性細胞のシグナルが弱くなることを確認した。また、アポトーシス誘導経路のうち、カスパーゼ活性化について調べたところ、カスパーゼ3の活性化は、CNPおよびCNPの下流シグナル伝達因子でさらにアポトーシス抑制効果のあるcGMPの添加により活性化が抑制されていた。さらに、アポトーシスの促進もしくは抑制に関連する12の因子について遺伝子発現量をCNP添加および無添加群において比較した。その結果、複数の因子においてCNPの添加により発現量の変化が認められた。しかし、これらの結果はcGMPを添加した場合とは必ずしも一致しなかったことから、CNPによるアポトーシス抑止効果との関連性を示すかどうか不明であった。 以上のことから、CNPはカスパーゼ3の活性化を抑制することで卵胞のアポトーシスを抑制することが明らかになり、初期胞状卵胞における卵胞閉鎖の解明にむけた重要な知見となった。
|