研究課題/領域番号 |
25450397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
黒川 勇三 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00234592)
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研究分担者 |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳牛 / 夏季暑熱 / 直腸温度 / 乳生産 / 酸化ストレス / 抗酸化能 / インスリン / グルコース |
研究概要 |
【目的】平成25年度の目的は、泌乳牛における酸化ストレスと抗酸化能の、夏季暑熱に伴う変化の様相を明らかにし、その変化に対して関連を持つ要因について探索することであった。 【方法】試験は広島大学附属農場において飼育されている泌乳牛(17~20頭)を用いて、平成25年8月、9月、11月の各2週間ずつを一つの試験期として行った。飼料は自給サイレージ、購入乾草、濃厚飼料等からなる混合飼料と、搾乳ロボット内で給与される濃厚飼料であった。8月と9月には畜舎では送風機とミストによる暑熱対策が行われていた。飼料乾物摂取量(DMI)および乳量、乳質、直腸温度(7:00と17:30)の測定を行い、最終日に尾静脈から血液を採取し、遠心分離後血漿を分析まで-30℃で凍結保存した。酸化ストレスの指標としてマロンジアルデヒド(MDA)、抗酸化能の指標としてpotential antioxidant(PAO)、ビタミンCを分析した。 【結果と考察】乳牛の夕方の直腸温度が8月に高く、乳牛が夏季暑熱の影響を受けていたと考えられたが、DMIと乳量、血中インスリン濃度、MDAに対する試験期の効果は認められなかった。一方で、グルコースやビタミンCで8月に低下が認められ、暑熱の影響が乳牛の生理と抗酸化能に及んでいたことが示唆された。共分散分析により、インスリンのグルコースに対する影響と、その影響の仕方が試験期の間で異なったことが示唆され、インスリンに対する感受性が試験期によって異なっていた可能性がある。さらにグルコースが抗酸化能(PAO)および酸化ストレス(MDA)に影響を及ぼし、その影響の仕方が試験期の間で異なることも示唆されている。 血中グルコースを指標として考えていくことで、夏季暑熱時における酸化ストレスや抗酸化能の制御について一歩進んだ検討ができると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は次の3点に要約される。 ①夏季暑熱による酸化ストレス、抗酸化能の変化の様相を把握すること。 ②夏季暑熱による酸化ストレス、抗酸化能の変化が、乳生産や他の生理的要因に及ぼす影響を明らかにすること。 ③夏季暑熱による酸化ストレスの上昇と抗酸化能の低下を抑制する飼料給与技術の検討 研究実績の概要で述べたとおり、①については、一定の知見が得られたと考えており、1年目の結果としては、ほぼ十分であったと考えられる。②については、1年目には疾病等が起きなかった乳牛に限った調査であったために、データの変動範囲が狭く、2年目以降の課題として残されている。さらにこの点を明らかにすることは、酸化ストレスや抗酸化能の正常値を検討することにつながると考えられる。③抗酸化能を高めて、酸化ストレスの上昇を防ぐ飼料給与技術は、まだ検討できていない。2年目以降に飼料に関する処理を行って、その効果を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①2年目(平成26年度)の方策 平成26年度は、酸化ストレスと抗酸化能の変動の範囲が広がる条件での調査を行って、疾病や生産性との関連性について明らかにする予定である。 まず、ひとつめは、夏季暑熱時に生産性が高まるような飼料の処理を行いつつ、酸化ストレスと抗酸化能の変化について検討する。生産性を高めることは、活性酸素の発生を高める可能性があり、酸化ストレスを高める可能性があると考えている。行う処理としては、暑熱時における飼料への中鎖脂肪酸の添加を予定している。中鎖脂肪酸の飼料添加は、血中グルコース濃度を高めることなく乳量を高める効果が報告されている。1年目に得られたデータから、酸化ストレスや抗酸化能は血中グルコースと関連することが示唆されており、この条件下での調査により、乳量の増加及びグルコースの変化と、酸化ストレスの関係性が、より詳細に明らかになると期待している。 二つ目には、酸化ストレスが高まるといわれる周産期に、酸化ストレスと抗酸化能の変化を調査して、疾病との関連性を明らかにする。この調査により、酸化ストレスと抗酸化能の正常値を明らかにするための基礎的なデータが得られると考えている。 ②3年目に向けた準備 酸化ストレスと抗酸化能の正常値を明らかにして、そこから逸脱しないような飼養管理法について検討したい。2年目に得られる酸化ストレスが高い条件下での、様々な血液性状の変化を解析して、グルコース以外で制御可能な生理指標を見出して、その効果の検証を3年目に行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
疾病等の理由で、乳牛供試頭数が予定を下回ったため、血液等の分析に要する消耗品費が予定を下回った。 乳牛の供試頭数を増やすか、または血液の分析の項目を増やす。
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