研究課題/領域番号 |
25450397
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
黒川 勇三 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00234592)
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研究分担者 |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳牛 / 夏季暑熱 / 抗酸化能 / 酸化ストレス / 中鎖脂肪酸 / 周産期 / エネルギー代謝 / グルコース |
研究実績の概要 |
【目的】平成26年度の目的は、乳牛の酸化ストレスが変化するような条件を設定して、エネルギー代謝関連の血液指標と酸化ストレス、抗酸化能との関連を調べることであった。 【方法】酸化ストレスが変化する条件として、①中鎖脂肪酸の飼料添加、②周産期が、血液の酸化ストレス、抗酸化能、エネルギー代謝関連血液指標に及ぼす影響を調べた。 【結果】①中鎖脂肪酸の飼料添加 24時間搾乳ロボットで自動搾乳される乳牛を供試し、サイレージ、乾草、濃厚飼料からなる混合飼料、搾乳ロボット内で濃厚飼料を給与した。混合飼料に、全飼料乾物中0.8%の中鎖脂肪酸(M区)または長鎖脂肪酸(L区)を添加した。飼料摂取量、乳生産に処理区間差は認められなかった。直腸温度と血漿マロンジアルデヒド(MDA)濃度がM区で高かった。血漿中グルコースに差は認められなかった。中鎖脂肪酸の飼料添加で、β酸化が増加し、酸化ストレスが高まったと考えられた。 ②周産期乳牛の酸化ストレス、エネルギー代謝指標の変化 分娩予定前30日から分娩後30日までの乳牛(初産5頭、経産6頭)を供試牛とし、分娩予定前30、7日、分娩後1、7、30日に調査した。分娩後にNEFAとケトン体の上昇が認められたものの、MDAは減少し、抗酸化能の指標であるPAOは上昇した。これらの変化は、分娩直前のビタミン投与によるものと考えられた。分娩後に、血漿中のアルブミンが増加し、尿酸とともに初産牛のほうが高かった。アルブミン、尿酸はともに抗酸化物質であることが知られている。 【考察】①の試験から、酸化ストレスはグルコース以外の代謝にも影響を受けることが明らかとなった。②の試験から、周産期の酸化ストレスの変化とともに、様々な抗酸化物質の血漿中濃度が変化することが示唆された。酸化ストレスの抑制には、エネルギー代謝とともに、抗酸化物質の動態も考慮する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は次の3点に要約される。 ①夏季暑熱による酸化ストレス、抗酸化能の変化の様相を把握すること。 ②夏季暑熱による酸化ストレス、抗酸化能の変化が、乳生産や他の生理的要因に及ぼす影響を明らかにすること。 ③夏季暑熱による酸化ストレスの上昇と抗酸化能の低下を抑制する飼料給与技術の検討 ①については、25年度の試験で一定の成果が得られたと考えている。26年度には、②を目指して、酸化ストレスと抗酸化能の変動の幅を広げて検討を行ったところ、グルコースのみならず、脂肪酸の酸化にも影響を受けて変動することが示唆されている。また、25年度に得られた成果とともに検討したところ、活性酸素の生成が増加する状況では、血漿中のいくつかの抗酸化物質の濃度が増えるなど、代償的な反応が起こる可能性も示唆されている。この代償的な反応の解析は、酸化ストレスの抑制に重要な意義を持つと考えられる。③については、26年度に実施した中鎖脂肪酸の飼料添加は、酸化ストレスの抑制につながるとは考えられなかったため、新たな飼料の検討が求められている。代償的反応の重要性を認識できたことは、一定の成果と考えているが、暑熱に対する酸化ストレスや抗酸化能の反応の複雑さを認識することにもつながっている。この点についての検討が、酸化ストレスに対する対策立案に必要不可欠と考えるに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の結果から、代償的な反応、すなわち、酸化ストレスが高まる条件では、同時に抗酸化能が高まるメカニズムが存在する可能性が示唆されている。抗酸化能が高まるメカニズムのひとつとして、ある抗酸化物質の生産が高まる、あるいは血液中の抗酸化物質の組織や細胞への取り込みが高まるなどが考えられる。そこで、27年度には、抗酸化物質の動態を明らかにする目的で、酸化ストレスのマーカー、抗酸化能のマーカーの、動脈と乳静脈との差(動静脈差)を調べたい。この動静脈差に対して、夏季暑熱や飼料への添加物が及ぼす影響を明らかにすることで、それらの処理が酸化ストレスや抗酸化物質の動態に及ぼす影響が明らかになる。酸化ストレスが高まる条件で、酸化ストレスのマーカーである血漿MDAに変化が認められなかったとしても、それが、抗酸化物質の組織・細胞内の取り込みによるものであるかどうかが明確になる。また飼料添加物が酸化ストレスに及ぼす効果が、抗酸化物質の動態にどのように影響を及ぼした結果であるかについて、考察できるようになる。酸化ストレスに関する研究で、このような抗酸化物質の動態に焦点を当てた研究は、いまだ行われていない。このような研究手法の有効性を明らかにすることで、今後の研究の更なる発展につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の消耗品が、納入に時間がかかったために、予定数まで購入できなかった。27年度には、同じ機能で納入に時間がかからない消耗品を探して、適切に購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
血漿中酸化ストレス、抗酸化能の分析キットを、必要数購入する予定である。
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