研究課題/領域番号 |
25450401
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
神作 宜男 麻布大学, 獣医学部, 教授 (60333142)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PREB / Prolactin / Pituitary / Pit-1 / embryo / Incubation / mRNA / Expression |
研究概要 |
鳥類において認められる就巣行動は下垂体から分泌されるプロラクチン(PRL)が関与していることが古くから知られている。鳥類の中でもニワトリ、シチメンチョウやアヒルなどの家禽においてはPRLが産卵の停止と抱卵行動を誘起することが知られており、PRL遺伝子の発現調節機構の解明は国内外の多くの研究者の悲願である。PRLは就巣行動と密接な関係があり、行動発現、つまり巣箱の中で過ごす時間とPRL遺伝子の発現量変動には強い相関が存在する。また、PRL遺伝子の発現量変化は就巣行動以外にも胚発生期後期においても認められる。就巣行動中の変動には視床下部ペプチドである小腸血管作用性ペプチドの量的変化が強い影響している事が知られているが、胚発生期後期のPRL遺伝子の発現量増加要因はいまだ不明であることから、下垂体において発現する様々な転写因子との関連性が示唆されている。本研究は鳥類の就巣行動を制御するPRL遺伝子の発現に対して転写因子の遺伝子発現の関係を見るとともに、胚発生期の遺伝子発現量変化及び生理的放出因子やアデニルシクラーゼ活性剤の影響を検討し、PRL遺伝子のオンオフ制御機構を明らかにするとともに、抗体作成を試み、下垂体中のPREBの存在を検証する事を目的とした。さらに、就巣性を有する品種とそうでない品種間でPREB遺伝子内の遺伝子変異-多型に関連があるか否かを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では胚発生期及び繁殖周期中にPREB遺伝子の発現量変化をPRLあるいはPIt-1の遺伝子変動と比較して定量する事ができた。また、PRLの生理的放出因子であるVIPやアデニルシクラーゼの活性化剤であるフォルスコリンによるPREB遺伝子の発現誘導まで確認する事ができた。従って、mRNA発現の定量は予定通り修了する事ができた。一方で、鳥類PREB抗体の作成の為に抗原の作成から行ったが、予定通りには終える事が出来なかった。抗体の作成と抗体価の検定まで行う事ができたが、抗原であるリコンビナントPREBの大量培養は当初予定していたより大腸菌内における発現量が低く、抗原としての量を確保するのに時間が掛かり、抗体が年度末ギリギリに作成できたため、胚発生期及び繁殖周期の下垂体におけるウェスタンブロット解析までは終える事が出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
繁殖周期および発生―成長期の下垂体をホモジネートした後、遠心分離を行い、上澄み分画を1次元および2次元電気泳動により展開し、PRL抗体とPREB抗体を用いてウェスタンブロット解析を行い、タンパク質の存在あるいは量的変動を検証し、遺伝子発現量変化との相関を明らかにする。また、下垂体中のPRL産生細胞との共発現があるのか否かを解明する為に免疫組織学的な解析を試みる。下垂体を繁殖周期および発生後期より採取し、固定した後に連続組織切片を作成し、PREB抗体およびPRL抗体を用いて同一の細胞に存在しているかを免疫組織科学的手法により検討する。 ニワトリPREBには多くの変異-多型がある事が明らかにされているが、この変異-多型と品種との関係を明らかにするため、遺伝子構造解析を行う。PREB遺伝子の領域を2つに分け、エクソン1からエクソン5およびエクソン5よりエクソン9に分けてPCRによりPREB遺伝子断片を増幅させ、精製後に産物の塩基配列解析を行う。平成26年度は鶏品種のうち、名古屋種を集中的に解析する。申請者は愛知県との間に共同研究の経験があり、愛知県が維持している名古屋種の全ての系統(卵用、肉用を含む6系統:NG1~NG6)の血液を多く有している。血液よりゲノムDNAを抽出後にPCRを行い、遺伝子配列解析を行い各系統における遺伝子多型頻度を検討する。肉用と卵用において明確な差が存在するかを検証する。解析数としては名古屋種としてはもっとも古いオリジナルの系統NG1を50サンプル、その他の系統はそれぞれ100~150サンプルを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗体作成を行う際に、作成した抗原の他にcDNA配列をもとにしたペプチド断片を合成し、抗体作成を業者に依頼した。業者からの納入が年度末ギリギリになり、年度内の遂行が学会発表のため不可能になり、本来実行するウェスタンブロットの試薬が購入できなかったため。 業者から納入された抗体をもちいてウェスタンブロットを行い、抗体価を検証する。
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