研究課題/領域番号 |
25450404
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
高橋 透 岩手大学, 農学部, 准教授 (20355738)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎盤性ラクトジェン / 血管新生 / 妊娠 |
研究実績の概要 |
昨年度の成績から、ウシ胎盤性ラクトジェンはマトリックスメタロプロティナーゼによってC末端側を切断されて、分子量が25kDa前後のN末端断片を生じる事が判明し、該当するMMP活性が胎盤の培養上清中に確認され、MMPタンパク質の存在をイムノブロットで確認した。 今年度は酵素切断によって生じるN末端断片を組換え発現で作成し、その生物活性を検討した。酵素切断で切断されると想定される部位以降のアミノ酸配列を欠失したウシ胎盤性ラクトジェンの組換えタンパク質を大腸菌の発現系で作成した。対照として、酵素切断を受ける前の成熟型ウシ胎盤性ラクトジェンも同じ発現系で作成した。完全長とN末端断片という2種類のウシ胎盤性ラクトジェンの組換えタンパク質の生物活性を検索した。組換えタンパク質のプロラクチン活性をNb2細胞(ラットリンパ腫由来細胞株で、プロラクチン依存的に細胞増殖を示す)を用いて検定したところ、完全長ウシ胎盤性ラクトジェンは、標準品として用いたヒツジプロラクチン(NIDDK oPRL-19)と同等の活性を示したが、ウシ胎盤性ラクトジェンのN末端断片にはプロラクチン活性は全く認められなかった。また、組換えタンパク質の血管新生に及ぼす影響をウシ血管内皮細胞の増殖を指標として検定したところ、完全長ウシ胎盤性ラクトジェンは血管内皮細胞の増殖に影響を与えなかったが、ウシ胎盤性ラクトジェンのN末端断片は用量依存的に血管内皮細胞の増殖を抑制した。 今年度の成績から、ウシ胎盤性ラクトジェンは酵素切断の前後で生物活性が全く異なる事が示され、胎盤から分泌された後に酵素による切断を受ける事によって胎盤血管新生を抑制的に制御している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究で、分泌型タンパク質とN末端断片型の2種類の組換えタンパク質を取得し、その生物活性を評価した。また、ウシ胎盤性ラクトジェンのN末端断片の標的細胞探索の為に、ウシ胎盤性ラクトジェンN末端断片のN末端側にアルカリフォスファターゼを融合させた融合タンパク質を発現させて、アルカリフォスファターゼを指標にして標的細胞を探索する実験系を構築した。このような進捗は本年度の計画に沿ったものであり、研究は概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画 平成26年度から継続して、ウシ胎盤性ラクトジェンN末端断片の標的細胞の探索を実施する。既に実験系は確立しているので、凍結切片上でアルカリフォスファターゼ融合タンパク質と標的細胞を反応させて特異的結合を発色によって検出する。 ウシ胎盤性ラクトジェンを切断する活性を有する胎盤特異的タンパク質を検索し、組換えタンパク質を作成してその生物活性を検証する。具体的には、ウシ妊娠関連糖タンパク質に焦点を当て、その組換えタンパク質の活性を検索する。
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