研究課題/領域番号 |
25450405
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹嶋 伸之輔 独立行政法人理化学研究所, 分子ウイルス学特別研究ユニット, 研究員 (60342812)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 牛白血病 / 日本在来牛 / 主要組織適合抗原 / 次世代シークエンサー / ターゲットリシークエンス |
研究実績の概要 |
本申請では、次世代シークエンサーを用いて、牛白血病の発症を規定するウシ主要組織適合抗原(BoLA)領域の詳細な解析を行い、発症因子を特定する事を目的としている。初年度は、日本在来牛の唯一の野生種である口之島ウシ12頭のゲノムDNAを入手し、そのBoLA領域のリシークエンス法を確立した。本年度は、さらに西洋種の影響を受けていない11頭の見島牛をBoLA領域のリシークエンスを行った。続いて、感受性BoLAアリルを有する黒毛和種3頭および中立のBoLAアリルを有する黒毛和種2頭のBoLA領域のリシークエンスを行うと共に、これら5頭にBLVを実験感染させ、そのウイルス量の推移を観察した。その結果、実際に感受性アリルを有する3頭ではウイルス量が上昇するのに対し、中立アリルを有する個体ではウイルス量の上昇は抑えられていた。これらの個体のBoLA-DQA1遺伝子もタイピングしたところ、最もウイルス量の上昇が強かった2頭ではDQA1遺伝子も感受性ホモであること、さらに、最もウイルス量の上昇が抑えられていた一頭では抵抗性DQA1遺伝子を有する事が明らかとなった。さらに、NGSによるBoLA領域全体の多型情報を調べることにより、ウイルス量上昇に関与する遺伝子の本体を明らかにしていく予定である。 本年度までに、口之島牛12頭、見島牛11頭、感受性黒毛和種3頭、中立型黒毛和種2頭のBoLA領域のターゲット・リシークエンスを終了した。これらのシークエンス結果を詳細に解析することにより、BLV発症に関与するBoLA領域内の遺伝子の本体を突き止め、黒毛和種の育種改良の重要な情報原とするのみならず、世界に蔓延している牛白血病ウイルス感染症の克服を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度までに12頭の口之島牛、11頭の見島牛、および5頭の黒毛和種牛のサンプリングを行い、BoLA-DRB3タイピングおよび次世代シークエンサーによるBoLA領域のターゲットリシークエンスを終了した。野生種である口之島牛や天然記念物である見島牛のゲノムDNAの入手は容易ではなく、そのサンプル数を増やすことは現実的ではない。しかし、本実験により口之島牛の遺伝子多型が非常に少なくなっており、多数のサンプル数を揃える必要が無いことが示唆された。 黒毛和種については、当初の予定になかったBLV感染実験を実施した事により、ウイルス量の推移が明らかに異なる個体群の情報が得られ、これらの解析を行うことにより、効率的にウイルス量に関与するBoLA領域の特定に結びつくものと考えられる。 これらのことから、今後サンプル数の増加を目指すのではなく、得られたサンプルの結果を詳細に検討することで、牛白血病関連遺伝子を効果的に検出する事が可能であると考えられ、研究は順調に進んでいるものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
BoLA領域は著しく高い多型性を示しており、また、重複遺伝子の数も明らかとなっていない事から、特にクラスI領域の遺伝子がアリルであるのか、複数の重複遺伝子が存在しているのかを解析するには時間が必要である。本年度は、MHC領域を注意深く解析していくことにより、牛白血病と強く関連する遺伝子の特定、およびその遺伝子の起源を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度では、口之島牛・見島牛および黒毛和種のサンプリングに成功し、そのMHC領域のリシークエンスを行った。これらのシークエンスより得られた情報について、クラスI領域を中心に解析を進めた結果、一部のアリル情報が十分に得られていない可能性が示唆された。そこで、アリル情報を現時点でのシークエンス情報を十分に精査し、新たなプローブを作製する事で、より正確、詳細なMHC領域の解析が可能となると考えられるため、試薬代を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度までの結果を精査し、新たなMHCプローブを設計してMHC領域のリシークエンスを行う。そのためのプローブ設計費用およびシークエンス費用として繰り越した助成金を使用する計画である。
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