研究課題/領域番号 |
25450406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
築城 幹典 岩手大学, 農学部, 教授 (10292179)
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研究分担者 |
栂村 恭子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 研究員 (00355108)
井出 保行 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 研究員 (00414714)
秋山 典昭 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 研究員 (30414741)
渋谷 岳 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 研究員 (10414715)
山田 大吾 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 研究員 (30391387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / シバ草地 / 放牧 / 移行係数 / モデル |
研究概要 |
今年度は、シバ草地における放射性Csの動態を明らかにするために、放牧期間中の草、放牧牛の糞、尿中の放射性Cs濃度の推移および肉への蓄積量を検討するとともに、放牧地における放射性Cs動態を表すモデルのフローチャートを決定した。 シバ草地の草中放射性Cs濃度は、放牧開始時には草地上部が1160 Bq/kgDM、下部が320 Bq/kgDMと大きな差があったが、6月以降は場所による差が小さくなり、3か所の平均で600~800 Bq/kgDMで推移した。糞中の放射性Cs濃度は、放牧開始後に濃度が急速に上昇し、7月ごろにピーク(2000~2500 Bq/kgDM)に達し、9月下旬まで比較的一定の濃度を保ち、10月にわずかに減少する傾向が見られた。一方、尿中の放射性Cs濃度は、20~280 Bq/kgと個体や季節で大きく変動し、飲水量や排尿量の違いが関係していたと考えられた。そこで、尿中のクレアチニン濃度との比で補正すると、糞中の濃度と同様の推移が見られた。牛肉中の放射性Cs濃度は、約200~300 Bq/kgで、いずれの個体においても首肉に比べてモモ肉の方がやや高い濃度を示した。また、体重が重い個体ほど肉中の濃度が高い傾向にあった。 放牧地における放射性Cs動態を表すモデルは、Cs137のみを対象とし、システムダイナミクスに基づいて作成することとした。レベルとしては、土壌未吸着Cs137,土壌吸着Cs137、植生中Cs137、リター中Cs137、放牧牛中Cs137、糞中Cs137、尿中Cs137の7つを取り上げた。土壌から植生へのCs137の移行には、土壌の交換性カリ含量が影響することが判明した。また,土壌中Cs137の吸着には、RIP(Radiocesium Interception Potential、放射性Cs捕捉ポテンシャル)が影響することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放牧草地における植生、糞、尿、土壌中の放射性Cs濃度および土壌性状のいずれの調査もほぼ計画どおり実施され、順調にデータがとられている。モデルについては、当初の計画では土壌の粘土割合、有機物割合、交換性カリ含量、pH、土壌溶液中NH4+を要因として取り上げる予定でいたが、モデルをできるだけシンプルにして頑強性をもたせるために、最も影響が大きいと考えられる交換性カリ含量と、粘土割合や有機物割合と関連し放射性セシウムの土壌への強い吸着を直接的に表すRIPの2つを取り上げることとした。この変更により、当初考えていたモデルよりもシンプルになったものの、堆肥施用、化学肥料施肥、除染、流亡、溶脱などの影響を組み込むことが可能であり、本課題の目的を達成するには十分と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、放牧草地における植生、糞、尿、土壌中の放射性Cs濃度および土壌性状の調査を行う。これらの調査結果をモデルにあてはめることで,モデル中で用いているパラメータの調整やモデル構造の改良を行う。最終的には、できあがったモデルを用いて放射性Cs動態の長期予測を行う。また、得られた知見をもとに、土壌中の交換性カリが十分でも放射性Csの暫定許容値を超える要因把握とその対策、2番草以降における濃度上昇原因の把握と対策、放射性Cs対策のための施肥メニュー(種類、量、時期)、ミネラルバランスを考慮した施肥メニュー、石礫圃場における効率的な除染法、家畜採食草への異物混入や土壌摂取の影響、空間的(水平、垂直)な分布、移動の把握などを検討する。
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