研究課題/領域番号 |
25450406
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
築城 幹典 岩手大学, 農学部, 教授 (10292179)
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研究分担者 |
栂村 恭子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (00355108)
井出 保行 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (00414714) [辞退]
平野 清 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (80360452)
秋山 典昭 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30414741)
渋谷 岳 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (10414715)
山田 大吾 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30391387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / シバ草地 / 放牧 / 移行係数 / モデル |
研究実績の概要 |
シバ型放牧草地における放射性セシウム動態モデルについて検討した。システムダイナミックスに基づいてモデル化を行った。134Csと137Csは,半減期が異なるものの,その動態は差がないと考えられるため,モデルでは半減期の長い137Csのみを扱うこととした。レベルとしては,土壌未吸着137Cs量,土壌吸着137Cs量,植生中137Cs量,リター中137Cs量,放牧牛中137Cs量,糞中137Cs量および尿中137Cs量の7つを取り上げた。土壌未吸着137Csから土壌吸着137Csへの移行に影響する要因としては,RIP(Radiocesium Interception Potential,放射性セシウム捕捉ポテンシャル)を取り上げた。RIPは,土壌に吸着した137Csと土壌溶液中の137Csとの分配係数(KD)と,土壌中交換性カリ含量(g kg-1)から求める。また,土壌未吸着137Csから植生中137Csへの移行に影響する要因としては,土壌中交換性カリ含量を取り上げた。リターおよび糞の分解は,気温の関数とした。植生の成長量は実測値をもとにテーブル関数で与えた。また,家畜の採食量は,草量が十分あると仮定して一定とした。137Csの半減期は30.17年とした。モデル作成には,Vensim PLE Version 6.0b(Ventana Systems Inc.)を用いた。モデル中の137Cs量の単位はBq m-1とし,シミュレーションは日単位で行った。 事故直後は,降下した137Csが直接植生に付着したため,植生中137Cs濃度が10万Bq kg-1以上と高かったが,その後急速に低下している。2012年以降は,400~1600 Bq kg-1と2011年に比べて低下してきているが,依然として牛飼料の暫定許容値(134Cs+137Cs)である100 Bq kg-1(134Cs+137Cs)を超過している。モデルのシミュレーション結果は,2011年は実測値に近いものの,2012年以降は実測地よりも低くなる傾向が見られた。牛体中137Cs濃度は,放牧終了後に屠殺して計測するため,2013年の放牧終了時にしか実測値がないが,シミュレーション結果と近い傾向にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放牧草地における土壌,植生,糞,尿,牛体中の放射性セシウム濃度および土壌性状のいずれの調査もほぼ計画どおり実施され,順調にデータがとられている。モデルについては,当初の計画では土壌の粘土割合,有機物割合,交換性カリ含量,pH,土壌溶液中NH4+を要因として取り上げる予定でいたが,モデルをできるだけシンプルにして頑強性を持たせるために,最も影響が大きいと考えられる交換性カリ含量と,粘土割合や有機物割合と関連し放射性セシウムの土壌への吸着を直接的に表すRIPの2つを取り上げることとした。この変更により,当初考えていたモデルよりもシンプルになったものの,堆肥施用,化学肥料施肥,除染,流亡,溶脱などの影響を組み込むことが可能であり,本課題の目的を達成するには十分と判断された。平成25および26年の実測値をモデルに当てはめたところ,放射性セシウム濃度の年次変化はほぼモデルであらわされるものの,季節変化についてはモデルで実測データの動きをまだ十分に表すことができていない。平成27年度も引き続きデータの収集を行い,モデルを改良していく。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,放牧草地における土壌,植生,糞,尿および牛体中の放射性セシウム濃度および土壌性状の調査を行う。これらの調査結果をモデルに当てはめることで,モデル中で用いているパラメータの調整やモデル構造の改良を行う。最終的には,できあがったモデルを用いて放射性セシウム動態の長期予測を行う。また,得られた知見をもとに,土壌中の交換性カリが十分でも放射性セシウムの暫定許容値を超える牧草が見られる要因解析とその対策,2番草以降における放射性セシウム濃度上昇の原因の把握と対策,放射性セシウム対策のための施肥メニュー(種類,量,時期),ミネラルバランスを考慮した施肥メニュー,石礫圃場における効率的な除染法,家畜採食草への土壌接種の影響,空間的(水平,垂直)な分布や移動の把握などを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた空間放射線量率の調査が,天候のため十分に行えなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度行えなかった空間放射線量率の調査を,今年度実施する。
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