研究実績の概要 |
本研究は網羅的RNA解析を活用して、母ドリの卵黄への抗体輸送を担うIgY受容体を同定することを目的とした。これまでに、ニワトリ卵胞の最内層で発現する遺伝子の配列を次世代シークエンサーを用いて網羅的に判読した。その中から既知IgY受容体の配列に類似する候補遺伝子を抽出したが、この遺伝子からはタンパク質への翻訳が生じていないことが判明した。さらに解析によって得られた膨大のRNA配列の中から候補遺伝子を抽出することが困難であることが判明した。そこで、最終年度はIgYの卵黄輸送能に差がある2群以上のニワトリおよびウズラ集団を発掘し、網羅的解析による候補遺伝子の抽出を容易にするためのモデル動物の確立を目指した。得られた結果の概要は以下の通りである。 ・閉鎖系集団で維持された5系統の雌ウズラ(AWE, DB, L, Pansy, WE)と市販の雌ウズラに標識IgYを翼下静脈に投与した。産卵された卵の卵黄に取り込まれた標識IgY量を測定し、これを各系統の卵黄輸送能の指標とした。系統間で標識IgYの卵黄への取り込み量に差は見られず、IgY輸送能に差があるウズラ集団を見つけ出すことはできなかった。 ・孵卵18日目の鶏胚からファブリキウス嚢を外科的に除去し、IgY欠損鶏を作出した。産卵開始まで育成し、翼下静脈に投与した標識IgYの卵黄への取り込み量を測定した。産卵された卵の卵黄に取り込まれた標識IgY量は、通常鶏よりもIgY欠損鶏で約3倍高くなった。 ・IgY欠損鶏では、内因性IgYの欠損により代償的に卵黄へのIgY輸送能が亢進したと推察された。よって、IgY欠損鶏は網羅的解析による候補遺伝子の抽出を容易にするためのモデル動物として有用であることが判明した。
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