研究課題/領域番号 |
25450408
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮本 拓 岡山大学, その他の研究科, 教授 (00093708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルコール発酵乳 / アイラグ / 乳酸菌 / 酵母 / 共生作用 / 拮抗作用 / モンゴル地域 / 国際情報交換 |
研究概要 |
伝統的な発酵食品は長い年月をかけて複数の微生物からなる安定なフローラ(菌叢)が構築されている場合が多い。その安定なフローラは微生物同士の共生と拮抗を経て確立したものと考えられる。筆者らはこれまでの研究において、モンゴル地域(モンゴル国と中国内モンゴル自治区)から採取したアルコール発酵乳アイラグを構成する乳酸菌と酵母のフローラを明らかにしてきた。本研究では、それらの微生物間相互作用を調べ、共生作用あるいは拮抗作用の見られた乳酸菌と酵母について詳細な微生物的特徴を明らかにする。また、特徴の見られた菌種・菌株を用いて、アルコール発酵乳の効率的な製造技術を考察する。これらの研究目的を達成するために、平成25年度は下記の内容を主に実施した。 1.アルコール発酵乳アイラグにおける乳酸菌と酵母の微生物間相互作用の検討 モンゴル地域のアイラグから分離した乳酸菌と酵母を供試菌株とし、脱脂乳培地での単独ならびに混合培養時の酸生成、エタノール生成、生菌数などの継時的変化を調べ、共生作用や拮抗作用の有無を明らかにした。特に、アイラグの主要な乳酸菌フローラであるLeuconostoc mesenteroidesは酵母(Candida kefyr, Saccharomyces cerevisiae)との混合培養の時に生育が促進した。一方、これらの酵母の生育はLeuc.mesenteroidesとの混合培養でエタノール生成や酵母数の増加が見られ、乳酸菌と酵母との間に双利共生作用が見られた。 2.分離乳酸菌株の性状把握と商業的利用に向けた生理機能研究 分離乳酸菌株が発酵食品のなかで担う機能と役割を把握するため、構成乳酸菌の培養性状と生理機能を調べたところ、Leuc.mesenteroidesと同定された菌株の中に抗リステリア活性を持つバクテリオシン生産菌を探索した。今後、この菌株の分子遺伝学的な検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の学会発表ならびに雑誌論文への公表を進めており、研究目的の達成度はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、下記の2項目に焦点を当てて今後の研究を推進する。 1.アルコール発酵乳アイラグにおける乳酸菌と酵母の微生物間相互作用の検討 モンゴル地域のアイラグから分離した乳酸菌と酵母を供試し、それらの微生物間相互作用を検討する。特に双利共生作用の見られた乳酸菌と酵母の組合せを用いたアルコール発酵乳の製造技術を考察するために、乳酸菌と酵母の脱脂乳培地での単独ならびに混合培養時の酸生成、エタノール生成および生菌数の経時的変化を調べる。同時に、生育促進因子としての糖組成およびペプチドやアミノ酸組成に着目して、共生に関与する物質の特定を試みる。 2.分離乳酸菌株の性状把握と商業的利用に向けた生理機能研究 分離乳酸菌株が発酵食品のなかで担う機能と役割を把握するため、乳酸菌の抗酵母活性、乳酸菌の生産する抗菌物質としてのバクテリオシン、乳酸菌のγ-アミノ酪酸(GABA)生産活性等の生理機能をさらに追及する。一方で、アイラグの常在菌として分離されるLactobacillus helveticusの培養性状に関するこれまでの検討から、一般的には高温性で酸生成速度が速いとされるLb.helveticusにおいて、生育至適温度が通常よりも低く、酸生成速度の遅い菌株を分離した。この「亜高温性」で「遅生酸性」の増殖プロファイルを持つLb.helveticusに着目し、通常の生酸速度の速い高温性Lb.helveticusとのタンパク質分解特性やその他の代謝特性を酵素学的・分子生物学的な視点から比較検討する。これらの研究によって、有用菌株を用いた機能性発酵食品の創製が期待される。
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