研究課題
アイラグに由来する乳酸菌9 株と酵母5 株を用いて微生物間相互作用を検討したところ、Leuconostoc mesenteroides subsp. dextranicum 6B2081と酵母のSaccharomyces cerevisiae 4CあるいはCandida kefyr 2Y305の間では双利共生作用が認められた。すなわち、乳酸菌ラクターゼの作用でラクトースから生産されたグルコースとガラクトースを酵母が利用し、酵母の生産するペプチドなどを乳酸菌が生育促進物質として利用していることが示唆された。一方で、アイラグから分離した乳酸菌の抗菌活性を寒天平板拡散法によって調べたところ、抗菌活性が最も強かったLeuconostoc mesenteroidesの406株および213M0株をスクリーニングした。406株の抗菌活性に及ぼすpH、酵素処理および熱処理の影響を調べたところ、抗菌活性はpH4-7において安定であり、pHが高くなるにつれて、抗菌活性が低下し、pH12では失活した。いくつかのタンパク質分解酵素処理では抗菌活性が失われたが、カタラーゼ処理では失活しなかった。またpH6.0の条件下で、熱安定性を示した。これらの結果から406株の生産する抗菌物質は抗リステリア活性を持つバクテリオシンであると考えられた。また、SDS-PAGEにより、バクテリオシンの分子量を推定したところ、406株の生産するバクテリオシンは約3,300ダルトンであった。以上のように、本研究ではモンゴル地域の伝統的アルコール発酵乳アイラグにおける乳酸菌と酵母の共生作用をはじめて明らかにするとともに、抗菌物質生産性乳酸菌を単離した。これらの知見はアイラグの製造技術を改良する上で有意義な情報となる。今後、共生微生物や抗菌活性を示す乳酸菌などをスターターとした新たなアルコール発酵乳への応用研究が望まれる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Animal Science Journal
巻: 87 ページ: 449-456
10.1111/asj.12445