研究課題/領域番号 |
25450411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
坂田 亮一 麻布大学, 獣医学部, 教授 (10153892)
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研究分担者 |
時田 昇臣 日本獣医生命科学大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00180125)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シカ肉 / イノシシ肉 / 食肉加工 / 血絞り / 血抜き / 塩漬 / 発色 / 脂質酸化 |
研究概要 |
【目的】現在、野生動物による農作物の食害が増加の一途をたどり、人里や牧草地まで荒らされ、林業への影響も含めるとその被害額は甚大である。被害の約6割がシカによるものであるため、個体数の調整を含め、自然資源であるシカを有効利用する試みが国をあげて行われているが、シカ肉は狩猟後の取り扱いの不備等により残血による濃い肉色と臭いが問題となりうる。そのため、本研究では加工技術の中で先ず「血絞り」(あるいは「血抜き」と称する原料肉中の残存血液の除去操作)によるシカ肉やイノシシ肉の品質向上を目的とし、それらジビエと言われる肉素材を用いた食肉加工品を作成し、その加工特性などを考察した。【方法】シカ肉(長野県と神奈川県で採取)のモモ部を用いて血絞り区と、無処理区を調製した。血絞りには原料肉重量比1%のNaClと0.1%の塩漬剤を用い、ベーコンとソーセージを通常の燻煙と加熱工程で作成した。測定項目として、脂質酸化指標のTBARS値、加熱による損出肉汁割合を示すクッキングロス、製品最終収量などを測定した。【結果】シカ肉の加工特性として、TBARS値などの各測定値から血絞りによる影響は認められなかったが、製品の官能検査で、血絞りによって味が低化する傾向が見られた。本来、血絞りは肉の品質向上に使われる技術であるが、今回その工程でうま味成分まで流出したことが考えられる。血絞りしたイノシシ肉との混合ソーセージは高い消費者受容性を示し、味や香りに関してはほとんどのパネルが好ましいと評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とするシカ肉の加工特性として、クッキングロスなどの重量損出や最終加工品の重量変化を計画通り行うことができた。記載の一般成分、破断応力の解析の実施までにはたどり着かなかったが、シカ肉加工貯蔵における脂質酸化および官能検査を行うことで、不足する実験データは補えたと判断する。これらの得られた成果について、日本畜産学会大会や日本家畜衛生学会でも成果発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
対象とする研究で、2年目はシカ肉への凍結・解凍の影響を重点的に調べ、クッキングロス、最終収量の測定を繰り返す。また、試作した製品の色調をL* 値(明度) 、a*値 (赤色度) 、b* 値(黄色度)を測定し、へム色素の定量と発色率の測定を行う。色素測定で得られたアセトン抽出液を用いて、亜硝酸塩残存量を求める。狩猟時期が来ないとサンプリングの機会が限られるが、シカ肉、ならびにイノシシ肉が入手できれば、随時それらの加工適性に関する研究を推進する。また、台湾などの海外でのシカ利用についても、現地調査を行い、またそこでのセミナー開催を実施し、学術情報と意見収集に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたサンプルとして、特にイノシシ肉の入手が少なく、その狩猟時期が限定されていたこともあり、実験資材の購入が予定より少なかったことが理由として挙げられる。また、海外においてチェコ共和国内の東部森林地帯でのシカ狩猟と肉利用の実態調査を予定していたが、予定の時期(昨年9月)に調査を行うことができなかったのことも理由の一つである(世界獣医会議国際会議での依頼講演のため、チェコのプラハで開催)。 昨年使用できなかった分の研究補強として、今年度はサンプルの入手先を限定せず、国内での研究協力先を拡大し、また海外においても研究協力を求める方針である。
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