血管新生阻害活性を持つラクトフェリンの部位を決定するため、コラーゲンゲル内でサンドイッチ培養したヒト血管内皮細胞をVEGF(血管内皮細胞増殖因子)で刺激して、管腔形成を観察する実験系を用いた。この培養系にウシ由来ラクトフェリンとその部分分解断片を添加した結果、ラクトフェリンCローブ断片にラクトフェリン全長とほぼ同程度、血管新生を阻害する効果が認められた。一方、Nローブ断片の効果はラクトフェリン全長およびCローブ断片と比較して著しく劣っていた。これらの結果より、ウシラクトフェリンの血管新生阻害効果は主にCローブ断片が担っていることが明らかになった。 次に、ラクトフェリン受容体を同定するため、C-X-C型ケモカイン受容体の一種であるCXCR4とラクトフェリンの結合を検討した。この目的で、ビオチン標識されたCXCR4含有リポ粒子と、ポリスチレンウェルに固相化されたラクトフェリンとの相互作用を評価した。陰性対照(CXCR4を含有していないリポ粒子)と比較して、CXCR4含有リポ粒子とラクトフェリンの結合は有意に大であった。一方、CXCR4含有リポ粒子は、ラクトフェリンを固相化していないポリスチレンプレートには殆ど接着せず、ラクトフェリンとCXCR4の相互作用が示唆された。CXCR4発現細胞をラクトフェリンで刺激した場合、受容体活性化の指標であるCXCR4の二量体化・ユビキチン化・チロシンリン酸化が認められた。また、シクロヘキシミド処理により新規タンパク質の合成を停止させた状態で、細胞をラクトフェリンで刺激すると、表面のCXCR4量が減少することから、ラクトフェリン刺激によりCXCR4はエンドサイトーシスを受けている可能性が示唆された。
|