研究課題/領域番号 |
25450414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
野村 将 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 上席研究員 (80355065)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / 畜産物利用 / 牛乳 / プラスミノーゲン |
研究概要 |
L. lactis菌体から抽出したプラスミノーゲン活性化能(PA活性)について、塩析とカラムクロマトグラフィーによる精製を試みた。PA活性は硫安塩析により沈殿として回収できた。ゲルろ過クロマトグラフィーは当初は活性が回収されなかったが、溶出液組成を調整することでPA活性画分を得られるようになった。陽イオン交換クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーは、ともにPA活性がカラムから回収されず、精製操作は難航したが、最近になって、陰イオン交換クロマトグラフィーは緩衝液組成を調整することにより活性画分を得られるようになった。PA活性分子の主要構成成分を探るため、ゲルろ過の溶出フラクションについてPA活性および核酸、タンパク質、全リン、全糖を測定した。その結果、PA活性ピークは全糖の小さいピークと溶出位置が一致したが、核酸、タンパク質、全リンのピークとは一致しなかった。ゲルろ過による見かけの分子量は21kDaを示したが、一方で遠心式限外ろ過では30kDa以上が示唆された。ゲルろ過の緩衝液組成を変えるとより低分子量の位置に溶出されることから、活性分子はなんらかの相互作用によりゲルろ過担体と親和性があることが示唆され、21kDaは正確な値ではないことも考えられた。 菌体抽出液を加熱処理してもPA活性が完全失活しないことから、非常に強い構造を持っていることが考えられる。そこで、プロテアーゼ処理がPA活性に及ぼす影響を検討した。粗精製画分についてプロテアーゼであるアクチナーゼEで消化処理したところ、SDS-PAGEのタンパク質バンドはすべて消失したのに対して、PA活性は低下はするものの完全失活はしなかった。このことから、乳酸菌PA活性は、加熱やプロテアーゼ処理により失活する画分と失活しない画分が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、乳酸菌のPA活性因子の同定と26年度以降の試験に用いる試料調製を予定していた。因子の同定は、分子量推定と加熱およびプロテアーゼ処理の影響を明らかにしたが、クロマトグラフィーカラムからの回収が難航したため、分子同定には至っていない。同様の理由で精製試料が調製できていないので、26年度試験は菌体あるいは無細胞抽出液を用いて試験を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
プラスミノーゲン活性化因子の同定に引き続き取り組むとともに、菌体あるいは無細胞抽出液を用いて、計画通りに乳酸菌PA活性因子が牛乳中プラスミノーゲンに及ぼす影響の解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
乳酸菌PA活性因子の分子構造解析を外部へ分析委託する予定であったが、試料精製が難航し分子構造解析まで進まなかったため、次年度使用額が生じた。 クロマトグラフィー条件を多数試みた結果、ゲルろ過および陰イオン交換カラムからPA活性を回収できるようになり、構造解析へ向けて前進した。26年度には分子構造解析を実施できると見込んでおり、分析委託費として活用する予定である。
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