研究実績の概要 |
Lactococcus lactis subsp. lactis NIAI C59株が生産するプラスミノーゲン活性化能(PA活性)について、その分子同定を試みた。当初は塩析とカラムクロマトグラフィーにより活性分子を精製し同定する計画であったが、特異な挙動を示すため精製が難しく分子同定に進めなかった。一方、C59株を継代培養を繰り返すことで、PA活性を示さない自然変異株(C59MN株)を取得できた。両者の全プラスミド画分を比較したところ、C59MN株は約14kbのプラスミドを欠失していることが明らかとなった。このプラスミドをpC591と名付け全塩基配列を決定した結果、pC591は14,031bpから成り、L. lactis subsp. lactis IL594由来の既知プラスミドpIL2(8,277bp)および未知プラスミドの両者の複製タンパク質遺伝子repBが相同組換えで融合した形状であった。分子内に2つのrepB、2つのhsdS(自己DNAを守る制限修飾システムの認識サブユニット)、その他いくつかのORF様領域、また、pIL2由来のクエン酸パーミアーゼcitPはナンセンス変異によって短縮されていた。pC591がPA活性に関係することを確認するため、pC591を大きく二分割しC59MN株にそれぞれ導入したところ、どちらもPA活性の回復は認められなかった。このことから、pC591分子上にPA活性因子はコードされていないと考えられた。そこで、PA活性を示すC59株と示さないC59MN株との間でタンパク質ディファレンス解析を実施した。その結果、発現量が有意に異なるタンパク質をいくつか発見し、分子同定を進めている。 また、乳酸菌PA活性が牛乳中プラスミノーゲンに及ぼす影響を明らかにするため、C59株およびC59MN株を用いてチーズを試験製造し、熟成後の遊離アミノ酸含量を測定した。その結果、熟成3ヶ月後の遊離アミノ酸含量が有意に異なることを明らかにした。
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