研究課題/領域番号 |
25450418
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 玲子 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (80435966)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 粘膜免疫 / インフルエンザウイルス / IgA / 交差感染防御 |
研究概要 |
インフルエンザ粘膜免疫ワクチンは、ワクチン株のみならず抗原変異株や異なる亜型ウイルスに対しても交差感染防御効果を有する。この交差感染防御の主要因は、経鼻粘膜免疫によって誘導される分泌型IgA抗体であるとの報告があるが、どのようにして交差感染防御に働くかは分かっていない。本研究は、粘膜免疫によって誘導される抗体の交差感染防御機構を明らかにすることが目的である。 1.経鼻免疫により誘導されるポリクローナル抗体の反応性解析 不活化全粒子インフルエンザウイルスをBALB/cマウスの鼻腔内または皮下に接種し、鼻腔洗浄液、気管肺胞洗浄液および血清を採取し、それぞれに含まれるIgAおよびIgGの各亜型ウイルスヘマグルチニン(HA)に対する反応性および中和活性を解析した。その結果、いずれの亜型のウイルスを免疫原として用いた場合でも、複数の亜型のHAに交差結合する抗体が誘導された。また、経鼻接種群でのみ高いIgAの誘導が認められた。誘導された抗体の中和活性は免疫に用いたウイルス以外では認められなかったが、経鼻接種群の気管肺胞洗浄液は異なった亜型のウイルスの出芽・遊離する過程において阻害活性を示した。 2.交差反応性モノクローナル抗体の作出および反応性解析 亜型間交差反応性のある中和モノクローナル抗体(IgG)産生ハイブリドーマから自発的にクラススイッチを起こしたIgA産生細胞を選択し、可変領域が同一であるIgGとIgAを得た。これらの抗体のウイルスに対する中和活性を比較したところ、免疫原のウイルスに対してほぼ同等であったが、他の亜型ウイルスに対してIgAはIgGよりも高い活性を示した。さらに、IgAが強いウイルス出芽・遊離阻害活性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度研究実施計画はほぼ達成できた。ただし、今年度予定していたモノクローナル抗体作出は免疫途中なので次年度に継続し、今年度は既に保有するモノクローナル抗体を用いて解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1.モノクローナル抗体の作出および反応性解析 現在経鼻免疫しているマウスを用いてモノクローナル抗体を作出する。それら抗体の反応性およびエピトープ解析を行う。 2.抗体のウイルス感染防御効果の解析 亜型間交差反応性のあるモノクローナル抗体を用いて、マウス感染防御効果を調べる。またポリクローナル抗体および本研究で作出したモノクローナル抗体について感染防御効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度計画していたモノクローナル抗体作出が免疫原入手が遅れたため次年度に継続となり、そのための培地・試薬・プラスチック製品等の消耗品の購入が少なかった。 未使用額は、次年度に継続したモノクローナル抗体作出関連の消耗品に使用される予定である。また次年度は、感染防御試験に使用する動物および抗体の反応性解析に必要な試薬等の消耗品に使用する計画である。また、研究成果発表のための学会旅費および論文に関わる費用として使用する。
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