研究課題/領域番号 |
25450419
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
五十嵐 慎 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 准教授 (60374766)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トキソプラズマ / 病原性 / 慢性感染 |
研究概要 |
宿主の生存はトキソプラズマ原虫の生存にとって必須であり、通常、原虫の増殖は、宿主免疫系によって抑制され、原虫はシストを形成し、脳内あるいは筋肉内に維持され慢性化する。しかしながら、原虫自身がその生存戦略のために病原性をコントロールしているという証拠はまだない。申請者らは慢性感染ステージ特異的に発現するTgDPA分子がマウスへの病原性を抑制的に制御している可能性を見出した。本研究は、TgDPA分子と病原性との関わりを検討し、TgDPAの病原性抑制のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 本年度は遺伝子破壊株の病原性の確認を中心に行なった。DPA遺伝子破壊株の病原性は野生株に比較し高い傾向にあり、感染後11日目以降に、生存率の差が顕著になった。そこで感染後10日目の各臓器の虫体量を測定したところDPA遺伝子破壊株において高く、TgDPAが虫体の播種性あるいは臓器内での増殖に影響を与えている可能性が示唆された。急性期におけるマウス腹腔内でのトキソプラズマTgDPA遺伝子発現量は、計測を行った感染5日後まででは変化は認められなかった。このことは、感染初期においてはTgDPA分子が病原性抑制に積極的に関与していないことを示唆している。 一方で、in vitro培養系における虫体の増殖能および宿主細胞への侵入効率は、DPA遺伝子破壊株と野生株との間に差は認められなかった。 またTgDPA蛋白はTgADF蛋白を介したアクチンの脱重合に関与していると考えられることから、タキゾイト・ブラディゾイト両ステージにおける原虫の動きを解析したが、今のところ顕著な違いは認められていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マウスモデルでの病原性に関する再現性の確認および播種性、増殖能の検討、培養系での増殖能、感染性等の検討であり、研究は計画に沿って、進行している。また、次年度に予定していたTgDPA過剰発現株の作製を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、DPAノックアウト株および過剰発現株を用い、その生物学的性状および宿主免疫応答を感染実験モデルおよび培養系を用いて解析し、野生株と比較することにより、DPA分子の病原性との関わりを探索する。TgDPA蛋白の生化学的解析、paralogであるTgDERAおよび他の慢性期特異的に発現する分子との関連、結合パートナーであるTgADF蛋白との関わりを検討し、TgDPA蛋白の機能を探る。また、RNAseq法による網羅的な発現解析も予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ予定通り研究計画の遂行に必要な消耗品に支出した。実験の進行状況から予定していた消耗品の購入を一部見送ったため、若干の残額が生じた。 研究の推進方策に従って、ノックアウト株および過剰発現株の性状解析、TgDPA蛋白の生化学的解析、RNAseq法による遺伝子発現の網羅的解析を行なうための消耗品等に使用予定である。また、成果発表のための学会参加、論文校閲・投稿料に使用する。
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