研究課題
宿主の生存はトキソプラズマ原虫の生存にとって必須であり、通常、原虫の増殖は、宿主免疫系によって抑制され、原虫はシストを形成し、脳内あるいは筋肉内に維持され慢性化する。しかしながら、原虫自身がその生存戦略のために病原性をコントロールしているという証拠はまだない。申請者らは慢性感染ステージ特異的に発現するTgDPA分子がマウスへの病原性を抑制的に制御している可能性を見出した。本研究は、TgDPA分子と病原性との関わりを検討し、TgDPAの病原性抑制のメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度はTgDPA強制発現株、TgDPAノックアウト株および野生株についてRNAseq法による網羅的な発現解析を行った結果をもとに、たんぱく質発現の解析を試みている。RNA発現の違いが認められた上位約10遺伝子のうち、シスト形成にともない発現が変動することで知られている5遺伝子を選択し、組み換えタンパクをマウスに免疫することにより抗体を作製した。現在、得られた抗体を用いてTgDPA強制発現株、TgDPAノックアウト株および野生株におけるタンパク発現の解析を行なっている。以上のことから、TgDPA分子がシスト形成時の遺伝子発現の変動に関与していること、また発現パターンが急性期および慢性期虫体のそれにシフトすることが病原性に影響している可能性を示唆している。
3: やや遅れている
本年度は、昨年度行なったRNAseq法による網羅的な発現解析の結果をもとに、数種類の遺伝子を選択し、組み換えタンパクを用いて抗体を作製した。さらにそれら抗体を用いたウエスタンブロットおよび蛍光抗体法によるタンパク発現の変動を解析している。現在までのところ、TgDPA分子がシスト形成過程における発現の動態に関与していることを示唆しているが、原虫の遺伝子発現パターンをどのようなメカニズムで変動させているのか、またこの発現変動が病原性にどのように影響を与えているかが不明であるため、若干の遅れを生じている。
TgDPA分子を一過性に過剰発現させる等、発現方法に工夫を加えて経時的に解析することにより、TgDPA分子が発現パターンに影響を与えるメカニズムを検討する必要がある。
研究に若干の遅れを生じているため。
ノックアウト株および過剰発現株の性状解析を行なうための消耗品に支出する。
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