研究課題
宿主の生存はトキソプラズマ原虫の生存にとって必須であり、通常、原虫の増殖は、宿主免疫系によって抑制され、原虫はシストを形成し、脳内あるいは筋肉内に維持され慢性化する。しかしながら、原虫自身がその生存戦略のために病原性をコントロールしているという証拠はまだない。申請者らは慢性感染ステージ特異的に発現するTgDPA分子がマウスへの病原性を抑制的に制御している可能性を見出した。本研究は、TgDPA分子と病原性との関わりを検討し、TgDPAの病原性抑制のメカニズムを明らかにすることを目的としている。TgDPAによる病原性抑制は、当初予想していたほど顕著ではなかったものの、マウス感染実験において再現性が確かめられた。本年度はTgDPA遺伝子の有無による病原性の差異がより明確に認められることを期待して、TgDPAの相同遺伝子(paralog)であるTgDERAノックアウト株およびTgDPA/TgDERA二重ノックアウト株を作製した。TgDERAはTgDPAに対し53%のアミノ酸配列相同性を有し、TgDPAと類似の機能を有すると予想される。また、トキソプラズマゲノム上にその他の相同遺伝子は存在しない。これらノックアウト株は野生株やTgDPAノックアウト株と同等の増殖性を示したことから、両遺伝子が担う機能は原虫の生存及び増殖には関わっていないことが明らかになった。慢性期虫体への分化を誘導した後蛍光抗体法を用いてシスト関連たんぱく質発現の解析を試みたところ、上記すべてのノックアウト株において野生株と同様にシスト壁形成が認められたことから、これら分子はシスト形成能には影響は与えていないと考えられた。現在、これらノックアウト株の表現型を解析しており、今後マウスを用いた感染実験により病原性の確認をする予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件)
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