研究課題
インフルエンザは毎年冬になると流行し、多くの犠牲者を出す。また、数十年に一度起こるパンデミックや、鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染も、社会的に大きな問題となっている。本研究では、インフルエンザの病原性発現において、ウイルス表面糖蛋白質ヘマグルチニン(HA)が果たす役割を明らかにすることを目指す。平成26年度までに、1918年にパンデミックを起こしたスペイン風邪ウイルスとその類似鳥インフルエンザウイルス(以下、スペイン風邪類似鳥ウイルス)のHAの性状解析、および、それらのウイルスの病原性解析を行った。平成27年度は引き続き、インフルエンザウイルスの病原性発現機構を詳細に調べた。本年度は、スペイン風邪ウイルスのPB2を持つスペイン風邪類似鳥ウイルス(以下、スペイン風邪PB2鳥ウイルス)をマウスに感染させ、病原性および宿主応答を調べた。その結果、スペイン風邪PB2鳥ウイルスを感染させたマウスの肺では、強い免疫応答および炎症性反応が認められた。さらに我々は、スペイン風邪ウイルスのPB2が、肺の修復過程にも関与するWnt signaling pathwayに関わる遺伝子群の発現を抑えることを示した。以上の結果から、スペイン風邪ウイルスの病原性発現において、HAだけでなくPB2も重要な役割を果たしており、それらのウイルス蛋白質により、感染宿主の肺における免疫反応のバランスが崩されることによって、肺障害が引き起こされることが示された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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