研究課題
多包条虫症は国内おいても重要な人獣共通寄生虫であり、人では虫卵の経口摂取後肝臓に寄生した幼虫が無性増殖することにより重篤な疾病を引き起こす。この虫卵から感染初期の幼虫に関する研究は遅れており、今回の研究ではこの時期の寄生虫のトランスクリプトームを解析することである。今年度は、前年度から引き続き様々な分子に関しての解析を続けるとともに、以下のように幼虫のapomucinについて調べた。エキノコックスの幼虫周囲はlaminated layer (LL) が取り囲み、これが幼虫と宿主のインターフェイスである。この主成分は糖タンパクであり、これらの分子の機能が注目されている。多包条虫の培養微小嚢胞の結果からLLに発現する分子、特にapomucinについてin silico 解析した。有鉤嚢虫の論文からGP50が主要なLLの糖タンパクと予想したが、意外なことにエキノコックスでは虫卵や成虫では多く発現したが、幼虫における発現量は少なかった。一方、単包条虫の研究ではLLについて他の糖蛋白が注目されており、いくつかのapomucinが候補と考えられている。我々はこれらのapomucinの相同性検索から、多包条虫におけるapomucinを解析した。さらに、機能解析のためにRNA干渉を試みた。我々はこれまで原頭節(LLが無い)を用いたRNA干渉については確立してきたが、今回は培養嚢胞(LLがある)を用いて検討した。様々な大きさの培養嚢胞を作成し、浸漬法の様々な条件設定で行い、そのsiRNAの取り込みを確認しようとしたが、残念ながら全く成功しなかった。今後はエレクトロボレーションの様々な条件設定行う必要があると思われた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
PloS Neglected Tropical Diseases
巻: 10 ページ: e0004634
10.1371/ journal.pntd.0004634