研究課題/領域番号 |
25450426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
川口 博明 鹿児島大学, 獣医学部, 准教授 (60325777)
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研究分担者 |
谷本 昭英 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10217151)
三好 宣彰 鹿児島大学, 獣医学部, 教授 (80229905)
三浦 直樹 鹿児島大学, 獣医学部, 准教授 (80508036)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高脂肪・高コレステロール食 / マイクロミニピッグ / 動脈硬化 / アンジオテンシンII / 高コレステロール血症 / エコー |
研究概要 |
【目的】本課題では、我々の開発した食餌制御のみ、すなわち高脂肪・高コレステロール食の8週間給餌により動脈硬化症を誘発するマイクロミニピッグ動脈硬化モデルを利用し、臨床画像検査で確認できる程度の動脈硬化病変をより短期間に発生させ、医療機器開発用動脈硬化発症ミニブタを作出することが目的である。平成25年度は食餌制御にさらにアンジオテンシンII投与を負荷し、エコーで確認できる程度の動脈硬化病変をより短期間で発生できるかについて検証した。 【材料と方法】成獣マイクロミニピッグ雄14頭を3群に分けた。I群には普通食給餌および生理食塩水の静脈内持続投与を、II群には普通食給餌およびアンジオテンシンIIの静脈内持続投与を、III群には高脂肪・高コレステロール食給餌およびアンジオテンシンIIの静脈内持続投与を施した。試験期間を2週間とし、経時的に血圧と心拍数の測定および頸動脈におけるエコー検査を行い、投与前および投与後1および2週間目に採血、体重測定を行った。実験終了後、麻酔下放血により安楽殺して病理解剖を行った。剖検時、心臓や大動脈などの循環器系器官および全身諸臓器の肉眼観察や器官重量測定などを行った。 【結果】アンジオテンシンII投与(IIおよびIII群)により高血圧が生じた。普通食給餌(IおよびII群)では、高コレステロール血症は誘発できず、剖検時肉眼観察では、大動脈に動脈硬化病変は確認できなかった。高脂肪・高コレステロール食給餌+アンジオテンシンII投与(III群)では高コレステロール血症が誘発され、剖検時肉眼観察で、大動脈に軽度の動脈硬化病変が確認できた。いずれの群でも頚動脈エコーで、動脈硬化病変を確認することはできなかった。 【考察】頚動脈エコーで確認できる程度の動脈硬化病変を短期間に誘発するには、アンジオテンシンIIの投与量や投与期間、あるいはそれ以外の負荷する方法の検討などが必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題では、我々の開発した食餌制御のみ、すなわち高脂肪・高コレステロール食の8週間給餌により動脈硬化症を誘発するマイクロミニピッグ動脈硬化モデルを利用し、臨床画像検査で確認できる程度の動脈硬化病変をより短期間に発生させ、医療機器開発用動脈硬化発症ミニブタを作出することが目的である。 平成25年度は食餌制御にさらにアンジオテンシンII静脈内持続投与を負荷し、エコーで確認できる程度の動脈硬化病変を2週間で発生できるかについて検証したが、エコーで確認できる程度の動脈硬化病変は発生しなかった。しかしながら、剖検時肉眼観察で大動脈に軽度の粥状硬化が確認された。 これらの動脈硬化病変について、病理組織学的検索が必要であるが、現在、検査中である。具体的には、大動脈のOil red O脂肪染色を行い、赤く染色される粥状硬化病変の面積の定量化を行っている。さらに、この粥状硬化病変の病理組織学的検索も必要であるが、現在、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本を作製中である。その他、冠状動脈を含む心臓、大脳動脈輪や脳底動脈を含む脳などの病理組織学的検索も必要であり、これらもHE染色標本を作製中である。このHE染色標本の解析の結果、組織化学的染色(マッソン・トリクローム染色やエラスチカ・ワンギーソン染色など)や免疫組織学的染色(Iba-1, HLA-DR, lysozyme: マクロファージ系、α-SMA: 平滑筋)の必要性が生じることが予測される。よって、現在までの達成度としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
【目的】本課題では、我々の開発した食餌制御のみ、すなわち高脂肪・高コレステロール食の8週間給餌により動脈硬化症を誘発するマイクロミニピッグ動脈硬化モデルを利用し、臨床画像検査で確認できる程度の動脈硬化病変をより短期間に発生させ、医療機器開発用動脈硬化発症ミニブタを作出することが目的である。平成25年度は食餌制御にさらにアンジオテンシンII静脈内持続投与を負荷し、エコーで確認できる程度の動脈硬化病変を2週間で発生できるかについて検証したが、エコーで確認できる程度の動脈硬化病変は発生しなかった。平成26年度はまず、平成25年度でやり残している病理組織学的検索を行う。その後、NOS阻害薬(L-NAME: NG-nitro-L-arginine methyl ester)投与を2週間負荷し、エコーで確認できる程度の動脈硬化病変を発生できるか検証する。L-NAMEは経口投与で投与できるので、より簡便で再現性の高い実験系の開発にもつながる。 【材料と方法】成獣マイクロミニピッグ雄12頭を3群に分ける。I群には普通食給餌を、II群には高脂肪・高コレステロール食給餌を、III群には高脂肪・高コレステロール食給餌およびNOS阻害薬(L-NAME)経口投与を施し、試験期間を2週間とする。経時的に血圧と心拍数の測定および頸動脈におけるエコー検査を行い、投与前および投与後1および2週間目に採血、体重測定を行う。実験終了後、麻酔下放血により安楽殺して病理解剖を行う。剖検時、心臓や大動脈などの循環器系器官および全身諸臓器の肉眼観察や器官重量測定などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
剖検時肉眼観察で認められた大動脈の粥状硬化について、さらに病理組織学的検索が必要になった。しかしながら、大動脈のOil red O脂肪染色を行い、赤く染色される粥状硬化病変の面積の定量化する解析に時間が費やされてしまった。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本作製に時間がかかっており、特に、病理標本作製に必要なガラス類や染色試薬などの予算執行が滞ってしまったことが、次年度使用額が生じた理由である。 2014年7月を目安に大動脈の動脈硬化病変や冠状動脈を含む心臓、大脳動脈輪や脳底動脈を含む脳などのヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本を作製を行い、病理組織学的検索を実施する。その解析の結果、組織化学的染色(マッソン・トリクローム染色やエラスチカ・ワンギーソン染色など)や免疫組織学的染色(Iba-1, HLA-DR, lysozyme: マクロファージ系、α-SMA: 平滑筋)の必要性があるか判断する。
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