研究課題/領域番号 |
25450428
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
中嶋 秀満 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (30405360)
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研究分担者 |
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20244668)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 創薬 / 脳神経疾患 / 治療薬 / アミロイド / 酸化ストレス / アルツハイマー病 / 脳卒中 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
本年度で得られた成果は以下の通りである。 1.前年度に見出された最適化ペプチドGAI-Xのペプチドミミックによる低分子化合物の創製に成功した(コンパウンドX,特許申請準備中)。コンパウンドXは最適化ペプチドよりもGAPDH凝集阻害活性が強く、懸念される副作用(細胞毒性など)は認められなかった。以上の成果により、当初計画したペプチドでの動物モデルでの有効性評価を、より実践的かつ臨床応用に近い形で実施することが可能となった。 2.前年度に繁殖を開始したアルツハイマー病モデルマウス(3xAD-Tgマウス)の脳アミロイド病変に関して、1、3、6、及び12ヶ月齢で経時変化を観察したところ、大脳皮質に老人班様のプラークの形成と海馬錐体細胞での細胞内アミロイドβ蓄積を確認し、この病変にGAPDH凝集体が共存することが明らかとなった。さらに、海馬におけるGAPDH凝集体形成は、アミロイドβのアミロイド化に先行して1ヶ月齡から観察され、我々の提唱するクロスシード仮説がインビボでも確認された(論文準備中)。 3.アルツハイマー病動物モデルに加え、マウス脳卒中モデル(中大脳動脈閉塞モデル)におけるGAPDH凝集体の形成と梗塞巣の経時変化比較を行ったところ、GAPDH凝集体は梗塞巣の形成に先立って形成されることを明らかとした。従って、アルツハイマー病モデルだけでなく脳卒中モデルにおいてもGAPDH凝集体が病態形成に関わることが示唆された。また、上記1.の最適化ペプチドGAI-Xの脳室内投与により、脳梗塞巣と神経症状(運動機能不全および片麻痺)の有意な改善効果が認められたことから(論文準備中)、GAPDH凝集阻害剤は酸化ストレスが関与する脳神経疾患に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、ペプチド内包リポゾーム法を用いたGAPDH凝集阻害ペプチドの脳神経疾患への適用可能性についての基礎的研究であったが、ペプチドの最適化によりペプチドミミック低分子化合物まで展開できたことは、臨床応用という観点から大きな進展であると考えられる。また、インビボ(アルツハイマー病、脳卒中)でのGAPDH凝集体の病態発症への関与を明らかにしたこと、最適化ペプチドが動物モデルで有効性を発揮したことは、GAPDH凝集阻害剤が新たな創薬ターゲットになりうることを具体的に示した初知見であり、本研究がGAPDH凝集に関わる脳神経疾患発症メカニズムの基盤解明に留まらず、臨床応用への可能性を提示できたことは、大きな成果であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最適化ペプチドミミック型低分子化合物(コンパウンドX)のインビボ評価を実施し、さらに具体的な創薬展開が可能かどうかを検討する。また今年度で得られた知見をまとめ、海外学会発表と論文発表を実施する予定である。
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