ネオスポラ症は細胞内寄生原虫Neospora caninumの感染に起因する届出伝染病である。本症に対するワクチンは、①水平感染に対してはTh1型免疫が、②垂直感染に対してはTh2型が有効である。本研究の目的は、この相反する連続した事象に対するワクチンおよびワクチンプログラムの開発、特に②の問題について、経口投与型のワクチンの可能性を提示し、平成27年度の研究の概要を報告する。 最終年度である平成27年度では以下の事について研究を行った。(1)平成26年度で接着因子であるLT-Bおよび緑色蛍光蛋白GFPの発現をクラミドモナスにて確認していたが、さらに高度な発現を期待し、LT-B、GFP、さらに赤色蛍光蛋白tdTomato遺伝子のコドンの最適化を行った。その結果LT-BならびにGFP蛋白の発現量が上昇した。しかしtdTomato蛋白の発現は確認されなかった。(2)LT-BおよびGFP蛋白発現クラミドモナスのマウスでの経口投与試験を行った。投与は週2回のペースでゾンデを用いた胃内投与法でおこない、最初の投与から3週間後には対照と比べて優位に高いGFP蛋白に対する血中抗体が検出され、経口投与ワクチンとしての有用性が確認された。(3)N. caninumのタキゾイト由来NcSAG1およびブラディゾイト由来NcBAG1蛋白についてもクラミドモナスへのコドンの最適化を行い、人工遺伝子を作製後、クラミドモナスベクターへの組換えを行い、クラミドモナスでの発現を確認することができた。(4)経口投与型ワクチンとしてのクラミドモナス不活化試験を行い、56℃、15分の加熱で不活化することが判明した。今後、各種蛋白発現クラミドモナスは56℃、15分以上加熱した不活化虫体を使用することでより安全な経口投与型ワクチンが生産できることが確認された。 以上のことからより、クラミドモナスを用いて血中抗体を上昇させることが可能で安全な経口投与型ワクチンを作製できることが判明した。
|