研究課題
本研究の目的は、ボルナ病発症における環境要因(ストレス反応性内分泌分子:副腎皮質ホルモン:CORT)、および宿主要因(傍分泌分子:TGF-β)の影響に着目し、それらの作用機序を明らかにすること、さらに、増悪因子となる宿主要因を網羅的に探索し、未知の発症要因を同定することである。平成26年度の研究の目的は、1.脳における傍分泌分子であるTGF-βファミリー関連遺伝子発現量を感染細胞において継時的に比較解析すること(宿主要因に関する検討)、および2.BDV持続感染細胞における副腎皮質ホルモン添加による影響を調べることが柱であった。課題1については、(1)ラットグリオーマ由来株化細胞であるC6細胞とBDVが持続感染したC6BV細胞、ならびに(2)マウス大脳皮質初代神経細胞におけるTGF-βファミリー関連遺伝子の発現の比較を行った。現時点で(1)の細胞ではリガンドであるTGF-β1、ActivinβAおよびBmp7の遺伝子発現が有意に高くなり、その受容体遺伝子であるActRIIB、BMPPRII,およびActRIIBの遺伝子発現も有意に高くなっていたため、これらのリガンドがオートクラインに効いている可能性が示唆された。(2)マウス大脳皮質初代神経細胞においては、リガンド遺伝子であるActivinα、ActivinβBおよびBmp2の発現が有意に上昇しており、BDV感染により発現上昇する遺伝子がグリア系と神経系で異なる可能性が示唆され興味深い。課題2については、マウス大脳皮質初代神経細胞にBDV感染後、CORTを添加したところ、CORT添加細胞においてウイルス感染率と細胞障害性が上昇した。
2: おおむね順調に進展している
神経系株化細胞ならびにマウス神経初代培養細胞を用いたウイルス感染における宿主要因と環境要因の影響について、大変興味深い成果が得られた。研究の予定順は変更したが、来年度は動物実験を行うことにより、培養細胞で得られた成果と比較・解析を行いたい。
今後は、H26年度の課題1に引き続き、発現上昇が認められた遺伝子産物が生物学的な影響を感染細胞に与えているかを確認する。また、課題2の継続として、実験動物レベルでのBDV持続感染動物における副腎皮質ホルモンの影響を、病態やウイルス増殖・感染伝播において解析したい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
J. Vet. Med. Sci.
巻: 76 ページ: 1157-1160
10.1292/jvms.13-0349
京都産業大学先端科学技術研究所所報
巻: 13 ページ: 69-80