研究課題
成牛型サルモネラ症や人の食中毒の原因菌として問題となっているSalmonella Typhimurium(ST)ファージ型104(DT104)は百日咳毒素に相同性を示す蛋白[ArtA/ArtB (ArtAB)]を産生する。この毒素は百日咳毒素(PTX)感受性GTP結合蛋白質(G蛋白質)をADP-リボシル化する。この課題の目的は、ArtABの構造、機能および発現調節機構を解明することにより、当該毒素のST DT104における病原因子としての役割を検証し、牛サルモネラ症における新たな予防法の開発へと展開するための研究基盤を確立することである。25年度においてArtAB毒素の精製方法を確立し、当該毒素がPTXと同様にA1B5毒素の構造を成すことを明らかにした。26年度はArtABの生物活性について解析した。精製したArtABについて、PTXの生物活性として知られているニワトリ赤血球凝集活性、Chinese hamster ovary(CHO)細胞に対する細胞凝集塊形成活性、インスリン分泌亢進活性を調べた結果、ArtABはPTXと同様に、これらの活性を有することが明らかとなった。しかし、PTXとは異なり、白血球増多活性が陰性であり、これらの結果から、ArtABとPTXとの相違点が明らかとなった。また、昨年度、S. Worthington、S. Agoueve、S. bongori がArtABのホモログを産生することを明らかにしたが、これらのホモログもDT104由来のものと同様の活性を示した。
2: おおむね順調に進展している
ArtABとPTXの相違点が明らかとなり、ArtABの生物活性の一端が解明された。本課題は当初の計画通り進捗しているものと考える。
さらに百日咳毒素との比較において、好中球やマクロファージに対する走化性抑制活性、細胞に対するcAMP上昇活性等について解析を進めるとともに、DT104の細胞あるいはマウス等に対する感染実験を実施し、in vivoにおける毒素の発現およびその局在について解明する。
次年度使用額389,969円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、平成27年度に請求する研究費とあわせて研究計画遂行のために使用する。
当初の計画に従ってArtABの生物活性、発現調節機構の解析を実施し、さらに、課題で得られた成果を国内および海外の学会において発表するための旅費として使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Acta Veterinaria Scandinavica
巻: 56:31 ページ: -
10.1186/1751-0147-56-31