研究課題
牛をはじめとする家畜のサルモネラ症や人の食中毒の原因菌として問題となっているSalmonella Typhimurium (ST) ファージ型104 (DT104)は百日咳毒素(PTX)と相同性を示す毒素 [ArtA/ArtB (ArtAB)] を産生する。この毒素はPTX 感受性GTP結合蛋白(G蛋白質)をADP-リボシル化する。この課題では、ArtABの構造および機能を解明し、当該毒素の病原性因子としての役割を検証することを目的とする。これまでの研究により、ArtAB毒素の精製に成功し、この毒素がPTXと同様にAB5型毒素ファミリーに属することを明らかにした。さらにS.WorthingtonおよびS.Agoueve等のST以外の血清型菌や菌種の異なるS.bongoriもArtABホモログを産生することを見出した。これらの毒素はマウスの腹腔内接種により致死活性を示し、DT104由来の毒素がマウスに対して最も強い毒性を示す結果を得た。また、ArtABはPTXと同様に、CHO細胞に対する凝集塊形成活性、インスリン分泌亢進活性を示したが、PTXとは異なり、白血球増多活性は陰性となることも明らかにした。27年度は、ArtABがマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞において、G蛋白質のうちアデニル酸シクラーゼを抑制するGiをADP-リボシル化することによりcAMP上昇活性を示すことを明らかにした。この結果は、ArtABが細胞内cAMPの上昇を通じてマクロファージの機能に対して何らかの影響を及ぼしている可能性を示唆した。
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Acta Veterinaria Scandinavica
巻: 58:23 ページ: 1-4
doi:10.1186/s13028-016-0205-8
巻: 57:59 ページ: 1-5
10.1186/s13028-015-0143-x