研究課題
基盤研究(C)
鶏Eimeria によるコクシジウム症の制御は、養鶏農家における生産性向上に直結する重要な課題である。しかし、現行の抗コクシジウム剤は、詳細な薬理作用が不明のものが多い。最も病原性の高いE. tenella は、盲腸粘膜固有層での第二代無性生殖期にシゾントが約数十倍の大きさとなり、内部に200個以上のメロゾイトを包含する。我々は、シゾントの爆発的増殖にはエネルギー産生がその生存基盤を支えていると考えている。しかし、発育の場となる腸管内は低酸素環境下であり、一般に知られる代謝経路とは異なる酸素を用いないエネルギー代謝系が作動し寄生適応していると推測している。本研究課題では、Eimeria 原虫のステージ変換による代謝適応、およびステージ特異的な代謝経路を明らかにし標的分子を同定して、鶏や人体に影響のない安全な薬剤を創出することを目的とした。本年度は、エネルギー代謝関連の基盤情報を得るため、精製が容易な外界発育期について、RNA Sequencing を行った。E. tenella (NIAH株)の生鮮オーシストを28℃で培養し、0、24、48、96時間後の胞子形成中のオーシスト、およびin vitro で脱嚢させたスポロゾイトからtotal RNA を精製し、cDNA を合成後、Genome Analyzer IIxにより塩基配列を決定した。Assemble の結果得られたcontigについて、NCBI database等によりBLAST検索を行い、アノテーション付けを行った。結果、E. tenella の代謝関連酵素の遺伝子配列を決定することができた。いくつかの代謝関連酵素についてReal-time PCR によりmRNA発現の定量解析を行い、胞子形成後48時間でこれらの発現が最も高いことが分かった。また、エネルギー産生の中心となるミトコンドリア複合体IIの部分配列を得て、RACEにより全長を解読した。予測されるアミノ酸配列からペプチド抗体、および大腸菌によりリコンビナントタンパク質を作成し、ポリクローナル抗体を作製できた。
2: おおむね順調に進展している
RNA Sequencing の解析結果から、原虫の各種エネルギー代謝関連酵素および呼吸鎖関連酵素の塩基配列が明らかとなった。これにより、腸管内発育ステージでの比較が可能となった。
今後は、腸管内発育ステージのエネルギー代謝関連の発現解析、および原虫のミトコンドリアの精製方法を確立し、またその酵素活性を測定する。
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