研究課題
養鶏現場において、鶏コクシジウム症の制圧の成否は、生産性に直結する重要な課題である。本症は、Eimeria 原虫により引き起こされるが、抗原虫作用を有する飼料添加物は発症は抑えられるものの、感染を完全に阻止する事はできず、また生産物への残留問題等から使用制限が厳しく設けられている。そのため、安全かつ確実に原虫を殺滅できる新規薬剤の開発が希求されている。前年度、E. tenella スポロゾイトのミトコンドリアを精製する方法を確立できた。本年度は、精製ミトコンドリアを用いて、ゲノム上で確認できたNADH dehydrogenases Type II (NDH2)やmalate:quinone oxidoreductase (MQO)を含む呼吸鎖酵素について、シトクロムcの酸化により酵素活性の測定を行った。その結果、NADHを基質としたNDH2からの電子伝達の比活性が341nmol/min/mgと最も高かった。この測定系により、いくつかの阻害候補化合物を用いて、酵素活性を測定したいところ、阻害効果が認められた。今回確立した解析系は、Eimeria 属原虫の薬剤開発に繋がる呼吸鎖代謝経路の解明および新規薬剤スクリーニングに有用である。
2: おおむね順調に進展している
E. tenella 原虫について、ミトコンドリアの精製方法が確立され、また酵素活性を測定することができた。また、いくつかの阻害化合物において、酵素活性の阻害が確認できた。
今後、その他の化合物により、精製ミトコンドリアでの酵素活性阻害を検証すると共に、精製虫体を用いて、実際に殺滅効果を有するかを評価する。
平成27年4月に申請者は、大阪府立大学に異動となり、新所属でのラボの立ち上げや教育業務へのエフォートが重なった結果、研究計画の実施の遅延が発生した。しかし、新しい機材等の使用が可能となり、補助事業の目的をより精緻に達成できる可能性があるため、延長して、実験を行う。
継続して、原虫ミトコンドリアの候補阻害化合物を用いて、酵素活性阻害の確認、原虫特異呼吸鎖の発現解析および精製虫体による殺滅効果を検証していく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 12件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (4件)
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