本年度は、下痢性貝毒を投与したマウスで認められる体温の低下とヘマトクリット値の低下を指標とした下痢性貝毒のマウス・バイオアッセイの早期判定の可能性について検討した。以前に行った検討から投与2時間後のヘマトクリット値、体温と、投与24時間後のマウスの生死を比較した。その結果、尾静脈、あるいは頸部静脈など末梢からの採血はマウスの全身状態の悪化と循環不全のために不可能であり、ヘマトクリット値の低下と24時間後のマウスの生死を比較することはできなかった。一方、体温の低下については、例えば、コントロールマウスの体温から5℃以上の低下で判断した場合、24時間後のマウスの生死で判定する従来法と比較して、感度約95%、特異度約86%と非常に高い相関を示していた。このことから、マウスの体温低下を指標とする判定はマウスの死亡を待たずに早期に判定が可能であり、動物福祉的にも優れた方法であることが明らかとなった。 また、初年度に購入した心電図計を用いて、心電図を用いたエンドポイントの設定が可能かどうかについて検討を行った。予備検討として、致死経過の長い下痢性貝毒ではなく、致死経過の短いフグ毒、テトロドトキシンを用いた。その結果、心電図的に正常とほとんど変わらない波形を示していても、聴診器やパルスオキシメーターを用いて確認すると、血流や心音は消失しており、実質的な心停止の状態となっている場合があることが確認された。このことから、心電図を用いた実験動物のエンドポイントの設定は難しいと考えられた。一方、実験動物用のパルスオキシメーターだけでは結果が安定しないことから、様々なバイタルサインモニターを組み合わせたエンドポイントの設定の検討が今後、必要であると考えられた。
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