研究課題/領域番号 |
25450441
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
永野 昌志 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (70312402)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | IVG / IVM / 牛 / 初期胞状卵胞 / 受精卵移植 |
研究概要 |
牛卵巣中に存在する初期胞状卵胞 (直径0.5~1 mm) から採取した発育途上にある卵子 (直径約95 um) を、卵子-卵丘細胞-顆粒層細胞複合体 (OCGC)として体外発育培養(IVG)し、IVG法の改善に取り組むとともにIVG卵子の発生能に影響を与える要因について検討を行った。 12日間IVGを行った発育途上卵子を、体外成熟培養 (IVM) 前にIBMXを添加した培地で卵子を前培養 (pre-IVM) し、卵子細胞質成熟に深い関係があるとされているミトコンドリア活性をpre-IVMの前、10および20時間後に検査し、IVG卵子の発生能との関係について検討を行った。その結果、pre-IVM前に低かったミトコンドリア活性は10時間後に最も高くなり、20時間後には低下することを明らかにした。次に、これらpre-IVM時間の異なるIVG卵子をIVMおよび体外受精(IVF)に供した。その結果、10時間pre-IVMしたIVG卵子は核成熟率 (92%) および胚盤胞への発生率 (39%) が体内成熟卵子と同等まで向上した。以上の結果から、初期胞状卵胞由来の発育途上にある牛卵子は、体外で12日間IVGし、その後IBMXを用いたpre-IVMを10時間行うことによって、体内で発育した卵子と同等の発生能を獲得できることが明らかになった。また、IVG卵子の発生能獲得にはミトコンドリア活性が関連していることが示唆された。 また、OCGCをアンドロステンジオン添加培地で培養し、4日目に形態が正常なOCGC と顆粒層細胞が卵子から遊走あるいは卵細胞質が変性しているOCGCのエストロジェン(E)およびプロジェステロン (P) 産生を比較した。その結果、正常と判定されたOCGCではE産生が高く、P産生は低かった。次に、IVG培地にFSHおよび骨形成タンパク質 (BMP) 4 を添加して培養したところ、OCGCの生存性を高めると共にE/P比を高く維持できることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵子の発育培養(IVG)中のミトコンドリア活性測定やステロイドホルモン産生能の検討など、平成25年度中の実験目的については予定通り進展している。一方、体内発育卵子の動態を検討するための超音波ガイド下での生体牛からの採卵も実施しているが、1頭から採取される卵子の数が計画よりも少なく、発生能や機能を詳細に調べるにはいたっていない。しかし、IVG卵子の体外発生能が一般的な体外受精で用いられる体内発育・体外成熟卵子と同等にまで改善されたため、体外発育・体外成熟卵子由来の胚を生体に移植する実験を前倒しで行った。その結果、体外発育・体外成熟卵子由来の胚は体内発育・体外成熟卵子由来胚と同等の発生能を獲得していることが示された。この高い発生能は、pre-IVM中の卵子内のミトコンドリア活性の変動と連動している可能性が示唆された。 発生培養中の卵子を取り巻く顆粒層細胞からのステロイドホルモン産生能力、特にエストロジェン産生能の高い卵子-卵丘細胞-顆粒層細胞複合体はIVG終了までの生存性が高いことが分かった。しかし、ステロイド産生能と発生能の関係や卵細胞質内ミトコンドリア活性の関係については現時点では検討できておらず、今後検討する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
①OCGC培養実験:牛のOCGC培養に約2週間、体外受精を行うと更に1週間を要するため、1回の実験結果が出るまでに約1カ月を要する。その他の動物においては最適な培養期間すら不明である。そのため、本研究は複数年度に亘る研究を計画しており、平成25年度に実施した研究を継続して行う。 ②体外発育卵子の産子への発生能の確認:受胚動物への胚移植後、原因不明の胚死滅などが高頻度で発生することから、体外受精後の移植可能胚までの発生の確認は真の発生能確認にならないことが報告されている。そこで、本研究ではより主席卵胞に近い環境で発育したと考えられる体外発育卵子由来の胚を、レシピエント牛に移植し、その発生能について検討を行う。 ③内卵胞膜細胞が卵胞発育に与える影響の解析:本研究は卵胞の構成細胞の一つである内卵胞膜細胞の機能解析は全く行っていない。しかし、本研究において添加試験を行うBMP-4は内卵胞膜細胞から分泌され、顆粒層細胞のE2分泌を制御することが知られている。BMP-4の様に内卵胞膜で分泌される数種の因子を培養液に添加し、上述の項目を検査することによって卵胞発育・選抜への内卵胞膜細胞の寄与について検討する。 ④野生動物種への応用:動物園または野外で捕獲・安楽殺された動物から卵巣を採取し、卵子の培養を試みる。また、体外受精に必要な精子を動物園で飼育されている動物から麻酔下で採取するとともに、野外で捕獲・安楽殺された雄動物の精巣上体から精子を採取して保存、実験に使用する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究材料採取のために2月6日に公用車で高速道を利用し、利用料金2,700円をコーポレートカードで支払った。この支払い手続きが翌月の3月3日となり、当該年度の実支出額として算定されていないが、執行済みであるため残額はない。 昨年度中に執行済みである。
|